一人ぼっちだと思っていた。
手を差し伸べてくれる竜がいて、二人になれたと思った。
気づくと前を向けた。だから、少しずつ傍にいるものは増えていった。
けれど、彼と流れる時間の差を知った。
一人に戻るのだと嘆いて、惨いことを言った。ひどく傷つけた彼女がいた。
何もかもが怖くなって、知らぬふりを通した。
その間に一人増えて、いつのまにかもう一人。
さらにたって、彼ら以外にも大事なものが増えて―――
増えて、今。
きっと、新しい風がふいてる。
われない心
朝町を囲む結界に異常ができてからというもの、結構な時間がすぎた。
その間、色々あった。そう。色々。風矢が恋人つれてきたり。ベム君がちょっと色々変わったり。私がみう………うう頭が痛い。なにもない。そう私にはなにもなかった。
いやあったか!密漁者というネズミが侵入したりしたね!大変だった!
…うん、本当に色々あって。
不自由さに折り合いをつけることも慣れて、そこそこに平穏。
なんていうか、素敵だけど。頭が痛い問題が一つ。
そんなことを思いながら、頭痛の種こと我が家を見上げる。
庭掃除の途中。箒に顎をのっけて見上げるそこは、広くない。
っていうか、6人で住むにはちょっぴり狭い。
ここは、私がこの家を支給された時のままだ。前の住人の趣味だったのか、外観はログハウス。中身はそうでもない。
ダンジョンに潜らない戦闘系に家を増築するお金など、ない。
しかし商売をしない私には、さして困った広さでなかった。
…そう、なかった。
「………思えば遠くにきたもんだ」
絶対に一番いきおくれると思ってた男が嫁候補つれてきて。こう、彼女を部屋につれてこむようになったり。
そのことに壮絶に顔をしかめるベ、……ある竜が、来客用の部屋を作ろうよと言いだしたり。いいだすだけならまだしも私の肩をぐわしとつかみ揺さぶるし。だんだん上になっていくし。首にいきそうだし。怖いよ!
…そんなの作っても風矢がそっちに行くようになるだけだと思うなあ。
ということで、現在は間違いなくそれが無駄になると思うんだけど―――これからはもしかしたら必要かなとか思ったり。
そういうことに使わなくとも、もうちょっとスペース会った方がいいだろうな。みんなこまごまと商売始めたし、私の財産も増えたし。お泊りパーティとか素敵だし。
ということで、絶賛貯金中。目指せ増築。庭の畑つぶすのはおしいから、上に増やす方針で。
そんなわけで、私も役所のバイトしたり、ちまちま色々拾ったり。それと……
…いや他のことはない。なにもない。カ…ナ………とか…ない。へーいあいあむにーとー。
いつのまにかかたかたと震えはじめた肩を押さえて、ため息をひとつ。
ふ、ふふふ。最近寒いもんねだから震えるんだね仕方ないね私魔法少女とか知らない。
ここは身体を温めて震えをなくそう。掃除を再開だ。うんそうしよう。
ざっざっざと箒がこすれる。
こんもりと集まった落ち葉が、がさがさと越すれあう。
…落ち葉、かあ。
そういう季節なんだなあ。もう。
嫌な震えがとまった後は、妙な感慨に襲われる。
この町での、何度目かの秋。…こんなに長く、いる気はなかった。
いや、違う。
こんなに長く、いれると思わなかった。
居場所を探してここにきた。寂しいのが嫌で旅に出た。
でも、いつかまた、と思っていた。
いつかまた寂しくなって、ありもしない居場所を探す。
そうして、ずっと旅を続けて。どこかで眠るのだと。思っていた。
「……遠くにきたなぁ」
思っていた、と。昔にできるくらい遠くにきた。
ざっざっざ、と枯れ葉を集める。
役目を終えた葉っぱは、放っておけば土に還る。そうしてめぐる。
すべてがそうして同じところにいくなら、それはとても素敵なことだ。
―――私も彼らも。いつか。いつか別れても、おんなじところにいくのだろうと。
うん、色々と素敵なので、この葉っぱには寄り道をしてもらおう。おいもさんをおいしく焼いて灰になってもらった後、土に返るといいようん。
おいもはおいしい。おなかにたまるし。甘いし。ほくほく。
思いついた素敵なアイディアが、頬を緩める。
我ながら単純だと思うけれど、きっとこれも幸せなことなんだろう。うん。
だって、憂鬱なことは、金策だけになった。
それ以外のことは、寂しくなかった。
風になぶられる青い髪を押さえる。
私生来の色ではないそれを、空の色といった恩人。ここへの道筋を示してくれた人。
もう一度会えたら、今度は言える。
朝をちゃんと、見つけましたよ、と。
…うんまあ、でも。今は彼女はいないわけだし。
「おいもいる人ぉ、手ぇーあげてー」
でたらめな節をつけて、家の中に呼びかける。
ぱたぱたとよってくるいくつかの足音に、頬がさらにとろけた。