「ううっ。いつもすまねーねー」
「すまないと思うなら無傷でダンジョン出てくれよ…」
「違う! 違うよメー君! ここは『それはいわねぇ約束だろおっとっあん』がお約束だよ!?」
「お前とそんなわけ分らん約束した覚えねーよ!」
 お試しダンジョンを背中に、そんなアホなやり取りしつつ。
 私は内心憂鬱でした。

ごにん暮らし その5

 何が憂鬱かってあれだ。蘇生したてほやほやってことは関係ない。いつものことだから。
 森がちょっと歩きにくいことだって関係ない。以前はぐったりばたんきゅーだったけど、今は慣れた。
 何が憂鬱かってあれなんだよ。本当にもう。本当にもう。
 あれどうしようって話だよなあ。
 足取りも重くなるよ。あ。でもうちに帰ったらおやつの時間だ。緋那がなんか作ってくれている予感がする。びんびんと。
 でもなあ。やっぱりなあ。…気になるよなあ。
「重苦しい顔で何考えてんの、お前」
 気になるよなーって思いは、どうやら顔に出てたらしい。
 隣を歩くメーが、さして興味なさそうに聞いてくる。
「なにって…今後のことだよ」
「今後ぉ?」
「その後先考えてないお前が? って顔やめてくれよ。…今後、ベム君が、どうなることやらって、話だよ」
「どうなるもこうなるも…緋那の気が変われば一緒になるだろうし変わらなきゃまあ、どうにもならねーじゃん」
「そんなわかりきったことを言わないでよ…」
 とはいえ、部外者としてはそのくらいしか言えないのも確かだ。
 マスターなのに部外者なのかとつっこむなかれ。私が口出したら面倒なことになるとシックスなセンスが告げているのだよワトソン君。ワトソン君って誰。
 …なんか今変な電波を感じたな。
 軽く頭をふって、ちょっとだけ額に手を添えたりする。
 熱はない。残念ながら素だ。
「……だから、あんまりアホ面すんなって」
「悩みがちためらいがちに人のことアホアホ言わないでくれないかな!
 アホっていう方がアホなんだよメー君のあーっほっ!」
「じゃあお前やっぱりアホだろ!? 今アホっていったし!」
「そんなことぁどうでもいいのさぁ!
 そんなことより!
 メー君はあの二人にどうこうなって欲しいとかなって欲しくないとか、ないの?」
 びしりと指をつきつけて、気分は犯人はお前だ!みたいな感じに。
 いやなんの犯人だ。そもそも彼は部外者だ。
「…お前はあるの?」
 それでもあんまりに他人事調な光龍は、さらっと聞き返してくる。
 言葉に詰まる私。
 …いやつまるよ。そりゃ詰まるよ。めちゃくちゃつまる。じわじわと。
 ……だって。そんなこと。
 私は、考えていなかったわけで。
 でも二人ともどうにかハッピーになって欲しいなあみたいな次第で。
 …でも――――しかし。
 きっとそうやって何かが変わったら、私は、また?
「……丸く収まって欲しい」
「ああ。丸くはいいな。何事もなく、いい感じに収まるのが一番だろ」
 ひんやりと背中を撫でたなにかを無視して、最高に無難なセリフを吐いてみた。
 対するメーも対外無難な感じだけど、もう彼のことを言えない。言えないよ。へへっ。
 へへっ……ふぅ。
「…野次馬根性がないメー君だ」
「あっても困るんじゃねーの、こういうのは」
 何も言えないけれど、とりあえずぼやいてみた。
 メーは軽く鼻を鳴らして、続ける。
「俺は緋那がまあいいやつだと気に入ってるし。ベムもまあ似たようなもんだが。
 だからといって二人でくっついて幸せになって欲しいってなんか違うだろ。口だせねーよ」
「それ、は……正論だけどさあ…」
「恨みがましい目するなって。お前俺に何期待してるんだ」
「…いや別に。へたれに恋のキューピット気取れなんて無理難題は言わないけど、あんまりに冷静な面にむーっとしてるよ。磨智ちゃんに追いかけ回されてる時はあたふたしてるくせに」
「それとこれとは関係ないよな? 関係ないよな!?」
 あたふた発言がお気に召さなかったらしい反論を聞き流しつつ、ぼんやりと考える。
 いやまったく。やれることなんてないし、手を出すつもりはないが。
 …変にこじれて、例の約束を果たすことは、どうにか避けたいものだ。
 思わずちょっと遠くを見てみたりする。
 呑気に晴れ渡った空に、何とも言えない気持ちになった。

 …ちなみに、この後。家に帰ったらアホほどキノコとってきて緋那にあきれられてるベムを見て、さらに何とも言えない気持ちになった。
 ………本当に、もう、なんていうか。
 マスターは頭が痛いよ畜生。

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