机の上にステラを並べて、見直す。
 色とりどりの綺麗なステラ。
 12種類の素敵な宝石。
 12種類そろえるとなんでも願いがかなうなんてことはないけど金塊をはじめとする素敵アイテムと交換できる、ナイスなもの。
 それが、今。
「一色足りない…!」

よにん暮らし その1

 リビングの机の上をもう一度眺めて、ため息。
 これは住人同士で交換して、12色集めるっていうこともできるんだけど。
 ああもうこんな時に限って誰も目当ての持ってなくて交換できないんだよねえ。私赤いっぱい余ってるのに。
『あ。黄色がないんだね』
 と。頭を抱えていると、背中から声。
 机から少しだけ離れた位置のソファに、なにやら雑誌片手の磨智が立っていた。
「そう、黄色がないんだぁ…」
 こちらの手元をのぞき込む形の彼女に、はふとため息。
 うう悲しい。とても悲しい。あと一個なのに。
『ついてないね、マスター』
「言わないでへこむ!」
『そんなついてないマスターのラッキーアイテムはね、えーと…卵焼きと手袋(右手側)だって』
「脈略がないっていうかなんで右側だけ!?」
 手元の雑誌に書いてあるらしいアドバイスに、湧き上がる疑問の心。
 素直な叫びに彼女はちちと指をふる。
『ほら、その右手で幸運をつかみなさい、ってことでしょう?』
「そうかなあ。じゃあ卵焼きは?」
『…胃袋でステラを察知しなさい?』
 苦しい解釈すら、とってもきれいな笑顔で返ってきた。
 私も龍の表情が読めるようになってきたな。というか、なんか。磨智ちゃんはよく笑うね。
 よく笑う女の子は可愛いから何も言うまい。
「でも卵焼きなら手軽で素敵だね。今日のお昼はふわーっとしようかぁ…」
 私上手じゃないからぐちゃっとしちゃうけど。
 まあ、いいや。
 なんて思って立ち上がると、リビングのドアが開く。
 そこにいるメー君は私を見、磨智を見、特に何を言うでもなく庭に向いた窓の方へと向かった。
 彼はそこがお気に入りスポットなのである。
 日光浴は光龍のたしなみとかいってた。
 なんかじじくさいと磨智と緋那に言われて落ち込んだりもしてた。
『あ、メー君メー君。今日の光龍のラッキーアイテムはさ、一つ目が火焔草らしいよ。あげる』
『ラッキーアイテムぅ? お前またよくわからんこといいだして…生の火焔草どうするんだ』
『灰汁抜いて食べればいいじゃない?』
 とてとて歩み寄ったかと思うとどこからともなくとりだした火焔草を彼に渡した磨智が、こくんと首を傾げる。
 邪気のない、かわいらしいしぐさだなあと。マスター馬鹿を炸裂させたくなった。
『あとね。もう一つのラッキーアイテム。これだって』
 なんて和んでいると、空気が凍った。
 再び彼女が彼に渡した、いや頭にのっけたのは。
 綺麗で乙女チックな花冠。
「…ふ」
 似合わなさに漏れかけた笑声を必死で飲みこむ。苦しい。
 メーと言えばじろりとこちらをにらんだ後、磨智に向き直る。
 座ったまま、とってもガラが悪い感じの目線をやる。
『お前なんでこれを俺にやろうと思ったんだ…!』
『ええーだってぇー。光龍のラッキーアイテムだからぁ、メー君に幸福になってほしくてぇー』
『だらだらしゃべんな! 今俺滑稽なもん頭にのっけられて微妙な気持ちだよ! 幸せではねーよ!』
 ぎゃいぎゃい叫ぶメーに、磨智が耳をふさぎ、ふうとため息。
『やだねぇ、いちいちうるさいったら。人の善意に』
『善意…は、…そう、善意だけどよ……!』
『まぁあまりの似合わなさにおかしくなったのも本当だけどね?』
『ああやっぱりそういう女だよお前は!』
 にわかに声の勢いがそげたのは一瞬、ますますうるさく叫ぶ彼に、彼女はきゃっきゃと笑う。
 ケンカするほどなんとやらかもしれない。
 ならばいいなあと思う。
『かわいい光龍なら似合うのに、こんなのの頭に乗ったせいで。かわいそうな私手製の王冠』
『のっけといてその反応か!』
『あああとねぇ。ラッキー行動っていうのもあってね。目上の人に親切にしたらいいんだって』
『目上?』
 明らかに話題を変えるための言葉に、素直にオウム返しするメー。
 そうして頭の王冠をそっと床において、少し考えるように空を見て、がらりと窓を開ける。
『おい緋那ぁ。肩もむから休まないか?』
『なんだ、いきなり』
「っていうかそっちか!?」
 黙って聞いていた私だけど、これは口を挟まねば!?
 え、こうして卵焼き準備してるマスター無視してそういうこと言うの、みたいな!
『目上なんだろ。それは、お前じゃない』
「畜生言いかえせないがダダこねるぜ!」
 つかつか歩いて、ぐわしと肩をとかむ。
 そんなのどこふく風どころか鼻で笑いやがるメーに、とっても腹が立ちました! 畜生!
『おい、何の話だ。騒ぐなよ』
「私は確かにえらくないけどマスタ―なんだからね! マスターだからな!」
『でもかなたじゃねーか!』
「どういう理屈だこのへたれ光龍が!」
 いつも通りの口論に発展していく私たちを眺めながら、磨智が笑う。
 とっても楽しそうな彼女の脇に歩み寄り、緋那だけが不思議そうなに首を傾げた。

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