初恋は、近所のおねえさん。
 兄との喧嘩で擦りむいた色んなところを、優しく手当してくれた通りすがりの人。

 初彼女は、中学3年。
 バレンタインに告白されて、次の夏まで付き合った。
 色々と楽しかったし、俺は彼女が好きだったし。色々といい思いもさせてもらったが。
 違う学校にいった彼女は、当然のようにそちらで違うのを作ってた。

 それからは、まあ、印象深いことはない。
 高校は親友4人とつるんでいたら気が付いたら終わっていた。
 …親友の中には二人女の子がいたが。なにしろ、大事な友人と色恋なんざ面倒くさい。
 高校を出て、陶芸を諦め、仕事につき。独立するまでの、今に至るまで。
 まあ、付き合った人はいたが。結果はいつもふられる。
 軽いとか、将来性がないとか、男友達といた方が楽しそうだとか、そういう理由で。
 まあ、事実だ。
 そりゃあ、事実だ。

 うん、事実なんだが。人のぬくもりが恋しいというか。
 嫁さんほしい。

 そんな風には思ってた。
 思っていたはず、なんだが。

『どういったタイプが好みなんですか?』

 その問いに、思った以上に言葉がつまった。
 言葉が出てこなかったことに、割と驚いた。

***

 ぼんやりと。いや。割とはっきりと。
 またもおかしなことに巻き込まれた時の記憶がある。

 ただ、おかしなことにまきこまれた気がするだけで、細部は全く覚えていない。
 いや、その。今までのように危ないことはなかった、気もするが。
 なんというか、今までで一番困る。迷う。どうしよう。

 ………なんで俺、あの時瑞希さんと一緒にいて。しかもめっちゃドキドキしていたんだろう?

 なにがあったかは覚えていない。覚えていたかった気もするのだけど。覚えていない。
 けれど、なにかが残る。
 瑞希さんのことは、元々好きだけれども。
 それはこう、女の子は皆可愛い。野郎は紙。みたいないつものあれだ。
 きっかけを覚えていないまま、なんというか、その。…その、困る。
 もっと店にきてくれるといいなあ、と思うし。店以外でも会いたい。

 …しかし、これからどうしよう。
 あの後ちょっと楽しくお話とかしたが。その先をどうしよう。どう口説くものだった? 女って。いや。いやいや。軽い誘いなら近年もポンポン口に出せていたんだが。…本気で口説くのってどうするんだっけ?
 今まで割と告白されて流れだったし、よくわからない。
 なんとなく、というか。連想で。最も身近な女の顔が思い浮かぶ。高校時代の同級生その1だ。

『なに? 本気で惚れた? それを私に言われても。アドバイスできるようにみえるのか? …しかし、そうだな。守ってやればいいんじゃないか?』

 ダメだ。あいつは俺たちの中で一番男前だ。アレは女じゃない。
 それよりは、と残りの親友の顔が浮かぶ。そう、こっちはちょっと可愛らしい。可愛らしいんだが…

『え、今度は本気? じゃあ、そのままのタツキで頑張ればいいんじゃないのかな? …でも、そのまますぎるのもどうかな。とりあえず高校の頃「海賊王になりたい」とか卒アルに書いてたのは、黙っていてあげるね』

 だめだ。これはこれでダメだ。なんか、面白がってる。慈母の眼差しで面白がってる。あっちよりは参考になるが、どうだろう。なんだろう。彼女に言うのは以上に気恥ずかしい。家族に色恋の話とかするって、恥ずかしいよなというあれ。
 なんというか、もう女じゃなくてもいいや、ともう二人の同級生を思い浮かべてみた。

『やはりここはユーモアだろ。あとは気遣い。女性は大事にしてやれよ。ま、頑張れよ』
 一人は上から目線がむかついた。いや。俺の想像だが。
『一緒に修行すれば、いいんじゃないか?』
 一人はなんか、熱血だ。脳内で爽やかに笑ってる。なんでお前はそう、頭がいいのに馬鹿なんだろう。めっちゃ頭がいいのに。

 …というか、だめだ。あの二人もダメだ。相談するの想像したら、すごく気まずい。気恥ずかしい。

「…つーか、あれか?」

 軽い話にしたくないくらい、真剣なわけ?
 理由も覚えていないのに?
 我ながらそれはどうなんだ。オイ。大丈夫だろうか、色々と。

 頭のどこかで、冷静な自分が囁いてはいる。
 けれど、心臓とかが正直だ。
 そうだといわんばかりに、脈が速い。

「……とりあえず、友達から、かね」

 少なくとも酒の力を借りて口説くとかは嫌だ。…逃げ道を残されれてしまう。
 こちらの言動が酒の所為と思われてはたまらない。
 とりあえず、まずは客と店主を脱出しようか。
 それこそ、おいしいコーヒーでも用意しながら。

 サルーテ後日談。覚えていないけどミズキさんがかわいいのだけ覚えてる達樹君。軽く、惚れやすく。一途。おそらくのめりこむと重いよ。懐いた相手にぴよぴよついていく一族だからな!
 サルーテはまさかあんなにガチ口説くロールになるとは思わず大層悩んだことをここで告白します。楽しかったけどさ!
 あの後たぶんコーヒーふるまわれながら好きなお茶菓子聞きだされ流れで好きな食べ物聞きだされまず食事からはじまりそう。彼の説得は確か6割くらい。
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