あの一件からしばし経ち、こっそりとある診療所へと訪れた少女は、まあ、と声を上げる。
その目線の先には、長身の男。
整った顔になんともいえない表情を浮かべ、客のおばあちゃんにからまれる紫野。
「紫野様はきちんと働いていらっしゃるのですね」
「…あの男は頭はいいからね」
「山門の旦那ぁ。旦那はそれを見越して誘ったんで?」
少女につきそう青年に問われ、診療所の主は息をつく。
「別にそういうわけではありませんよ。ここは重症患者もいない。私だけでも十分だからね」
「ふむ。…では、友情、あったんで?」
「は? ありませんよ。少ししか」
嫌そうに呟いた山門は、ただ、と言葉をつなぐ。
「あの時言ったでしょう。別に。紫野君のことはさして大事というわけではありません。ただ、彼になにかあったら、早乙女のお嬢さんと飯田君は悲しい思いをするのかと」
「お嬢さんはともかく俺は紫野の旦那にそこまでの義理はかんじてねーですぜ」
「……」
「感じてねーですぜー」
「……飯田君、君、カルピスあげるから黙りなさい」
「先生は紫野様のことがとても大事なのですね」
「早乙女のお嬢さん、誤解だ。断じて違う」
「素直じゃねーですね」
「君も乗らない! 断じて! 違う! 基本的には嫌いだ、あんなクズ!」
「……君たちはなにを騒いでいるんだ?」
「黙れクズ!」
「いきなりなんだ」
叫ばれた青年はわずかに首を傾げる。
その顔に、ほんの少し不思議そうな色をのせる友人に、山門は小さく舌打ちした。
みたいに愉快に生きていくんだろうなあと思います。PLはなんだかんだで紫野さんが好きです。山門先生もなんだかんだで嫌ってたらああなりません。
…でも桜子さんはそのうちお嫁にいってしまいますね。……誰ですかおばちゃん生半可な男じゃ許しませんよ!この仕込み杖持ちと拳銃持ちとライフル持ちを乗り越えていってくださいよ!!(他人を巻き込む迷惑な宣言)
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