ヒミツのコイ
シナリオの募集要項
シナリオ名:ヒミツのコイ(R18)
プレイ時間:約3時間
人数:タイマン・2PLの選択式
推奨:ロールを楽しめる組み合わせ。探索者の積極性。
ある日、冒涜的な人形が送り届けられた。
人形には<あなたの望んだもの>と銘打たれていた。
概要
仲良し二人組の片割れに、下品な呪いの人形が届けられる。
どう見てもどう考えても呪いの人形。ただし、動くし喋る。体温がある。
連れて歩けば名誉棄損をうけかねない人形を、どうにかして返品することを目標とするシティ風味シナリオ。KPはアドリブ処理が多め。
シナリオ規約
シナリオ作者が「青月七日」であることを明記していただければ、好きに改変していただいて構わない。
NPCの性格から神格の変更まで特にこだわりはない。シナリオフックとして活用していただきたい。
ただ、どこを改変したのかをセッション後にPLの皆さんに説明していただけると多少嬉しい。
2020/12/29 初版アップ
NPC情報
藍田凛(あいだ・りん)(性別:HO1と逆(改変可能)年齢:HO1と同世代)
変装時の容姿:中肉中背。黒髪短髪の清潔感のある男性。黒髪セミロングの清楚系な女性。ただし、性別にかかわらず化粧品の匂いがする。服装もこざっぱりとしていて「雑誌の表紙にいそうなタイプ」。HO1の本来の好みに考慮はしていない。藍田の考えた「モテそうな人の恰好」である。
本来の容姿:中肉中背。男女ともに染めた金髪で短髪。ハデな赤縁の眼鏡をかけており、派手なメイクを施している。服装の趣味は露出が高く、派手。(このバージョンはシナリオで登場しないが、こういう恰好でHO1と出会っていましたという補足)
呼びかけ:<HO1の名前>さん、<HO2の苗字>さん、店長。口調は基本的に敬語。
本シナリオにおける黒幕NPC.ただしそんなに強くない。魔術的な教養はない。人形の正体も聞かされていない。人形の言動は本気で気味が悪いと思っている。何しろいうことを聞かない人形なので。
エマにそそのかされた被害者と言えば被害者だが、最終的にはHO2を殺そうとする加害者である。
メイクの仕事をしている女性(男性)。HO1となにかの折りに会い、一方的な愛情を抱いている。元恋人で通っていたチューベローズで、「HO1には既に恋人がいた。つらい」とポロリともらしたのがコトの発端。バーのマスターの好意(趣味)により、人工の原ショゴスでできた人形を譲り受ける。
藍田の目的は一つ。「HO1にHO2への疑念を抱かせ、別れさせる。同じ立場になり替わる」ことで、それができないのであれば、HO2を排除することだ。とはいえ、この脚本を書いたのはエマだが。
HO1に殺意はないため、HO1が怪我をすると「話が違う」と呟いたりもする。エマはHO1が安全だとは言っていないので、話が違うもなにもないのだが。
HO1にとって、藍田は顔は覚えていても名前を知らない程度の相手だ。その顔さえも、シナリオ開始時は分厚いメイクで覆われている。アイデアに成功して初めて「もしかしたら声に聞き覚えがあるような気がする」程度だ。
余談だが、実家はかなり金を持っており、多少わがままに育てられていることが、エマに目をつけられた原因であり、乗せられた原因である。
さらに余談として、元恋人にふられた理由は「勘違いSな言動が心底寒い」から。その他心がえぐれることを色々言われた。酒におぼれて<バー・チューベローズ>に通う頻度が増えた。藍田がSを目指した理由は理由は「好きな人にいじめられたい」と言う元恋人の期待に応えようとしたせいである。
<キャラシ・例(改変自由)>/p>
人形
見た目:今のHO1から想像して作った「小学一年生っぽい等身大人形」。髪色や目の色、眼鏡の有無は今のHO1に準ずる。PLに「過去から連れてこられたHO1ではないな」と思ってもらえるだろう。
触り心地:体温があり、触り心地は人そのもの。切れば血が出る。構成物質は<人の遺伝子・人の内臓・人の皮膚>なのだ。肘と膝にある球体関節のみが「人形」の特徴。なぜそんな見た目か。ただの人だと思われても困るが、ただの人形だと思われても困る。不気味で得体の知れないものと思ってもらうために、エマがデザインした。
藍田が探偵に依頼して入手したHO2の写真からエマが作った「今のHO1をそのまま小学生に縮めたような人形」服装はロリータ。腕に「HO1の名前が刺繍された」リボンを巻いている。
「何でも言うことを聞きます」とは口だけ。HO2以外の声は<意味のない物音>と認識しているので、HO1と2の会話は<ご主人様が誰かと喋っている>と解釈する。
HO2が何を言ってもすべて性的なことに変換する気味の悪い人形。「食べ物が食べれるか?」と聞けば「ご主人様が口移ししてくれるなら」手を繋ごうといえば「別の場所でつながりたい」。離れてくれと言えば「嫌です。胸がはちきれてしまいそう」といった具合。
思考能力はない。ただ「性的・非道徳的なな命令に無条件で従え」とエマにプログラムされた神話生物。エロに偏ったポンコツな会話プログラムが入っていると思ってもらえばいい。
必要最低限「自分の命が危なくなったら逃げろ」とプログラムされてはいるが。エロに偏り過ぎて首絞められても、水につけられてもそういうプレイだと解釈する。シナリオ内でエマと接触するまでは「HO2と1に危害を加えない」とプログラムされているので「水攻めプレイだよ」と言いながら風呂に顔押し付ければ数ラウンド後、死ぬ。燃やしても死ぬ。燃やした場合「子供そのものの悲鳴」を上げるし、この場合人型の遺体が出来上がるので、処理に困るはずだが。むしろそういったことができる探索者は非推奨なシナリオだと事前に伝えてほしい。
人形は1時間ごとに「かまってほしい」と要求してくる。どのようなように駄々をこねるかは、こちらの<人形トラブル表>を参考にしてほしい。
人形の中身(人工で小型の原ショゴス*オリジナル要素ありの弱体版原ショゴス)
STR:20 CON:10 SIZE:7 INT:10 POW:17 DEX:10
耐久:9 ダメボ:1d4
押しつぶし:100% ダメージ:db*2
触手 50% ダメージ:db*2
噛みつき 25% 1/2db
*この人形は、いかなる攻撃からも最小限のダメージしか受けない。(ただし、本来の原ショゴスとは違い、回復能力はない)
材料は「エマの体細胞」と原ショゴス作成に必要なAF。本来は肉塊だが、変幻自在という特性を生かし、HO1に似た姿に化けている。
エマ 性別:男性固定。年齢:45歳(美への執着で30代くらいに見える。純粋にメイクと気合)
容姿:身長180pの中性的な美形。黒髪ウェイブのロング。元の顔がいいから中性的な恰好が好きで、女性の服の方が種類が多くて楽しかったのでオネエになった。華奢だが体つきはいじってないので男性だとはすぐにわかる。
技能値:母国語は英語。日本語・ラテン語・フランス語・中国語も60%くらい。心理学80%。スタンガンのためのこぶし50%。回避80%。料理とか制作(カクテル)が30%くらい。職業は狂信者。
バー・チューベローズの店長。名前は偽名。どちらかといえばM。を名乗る、ただのタチの悪い魔術師。インド系アメリカ人。日本語は堪能、60%くらい。ラテン語・フランス語・中国語も各60%くらい。身長180p、褐色の肌に黒髪が映える、あでやかなオネエ。APPは18。メイクも似合うがとても男性。くらいナノリのオネエ。オネエなことに意味はない。彼の趣味。
藍田の恋の相談を聞き、そのキューピットをやってやろうと考えた。…と、いえば聞こえはいいが、実際は藍田の目的が達成されてもしなくてもどうでもいい。恋に破れた藍田を狂気の道に引き込めればよし、藍田の恋が成就すればそれはそれで「本当のことをバラされたくなければ、自分の目的に協力しろ」とでもいって、いい手ごまができるといった具合。下種である。
とはいえ、そのあたりはシナリオで開示されない。ただ藍田にとって都合の良い情報のみを探索者たちに伝える、妨害NPCである。
褐色のAPP18な理由は「こういうのいれば、みんなエマがニャルだと疑うんじゃないかな」という、PLへのミスリード。技能値は特に設定していないので、KPの好きにしてほしい。APP18は改変しないでくれると嬉しい。
HO1導入
午前10時。
あなたはHO2と待ち合わせをしていていた。
それというのも、今日の夜に約束をしているためだ。
H O2は、あなた方が住んでいる町から電車で一時間ほどの場所にあるホテルの食べ放題が当たったのだと言う。2名までいけるから、一緒に行こう。そんな誘いを受けたからだ。
けれど、時間になってもHO2は現れない。
あなたは帰ろうとするのかもしれないし、もうしばらく待つのかもしれない。あるいは、家に行こうとするのかもしれない。
そのいずれだとしても、電話がかかってくる。
「HO1、ごめん。今日の約束は無しにしてくれないか」
「家に変な荷物が届いて、外出どころじゃないんだ」
「でもできれば、見に来てくれないか。荷物、君に関係あるものかもしれないんだ」
困惑しきった声の後ろに、違う声が混じる。
幼い、過剰に媚びを含んだ、甘ったるい声だ。
「ご主人様、ご主人様、どうぞご命令をください、ご主人様」
「それが私(僕)の存在理由です」
幼いその声は、どこかで聞き覚えがあるような気もした。
「変な人形が届いて、喋って。外に出ようとすると騒いで。外出どころじゃないんだ。悪いけど、HO1に来てほしい」
- 幼い声にアイデア等に成功
- →どこか自分の声に似ているような気もする。
KP向け補足
このシーンの目的は「HO1がHO2と二人きりで長時間遊ぶ程度の仲」であることをPLに認識してもらうことだ。元から仲がいいなら、合流シーンから始めても問題ない。
同居で一緒に人形を受け取ってもそれはそれで楽しいかもしれない。人形の言動を考えれば、人形を受け取るのは探索者の家であることが望ましい。
HO2導入
あなたがHO1との待ち合わせ場所に行こうとしていたときだ。玄関に段ボールが置いてあった。大きさは縦が110センチほど。横は40センチほど。わずかに開いたそれからは、にょっと白い腕がのぞいている。まるで、人の子供のような。
白い腕は、そのまま段ボールをあける。段ボールの中から現れたのは、7,8歳ほどの子供だ。
子供の見た目は、どこかで見たことがある。(アイディア・あるいは無条件で「HO1に似ている」と分かる。ただ、幼少期を知っているならば「幼少期そのものではない(髪の色が違ったりする)」と分かる。印象としては「HO1の隠し子だったらどうしよう」といった印象だ)
可愛らしいフリルがふんだんにあしらわれた、長袖のブラウスとロングスカート(ズボン)をまとった子供は、あなたを見るとにっこりとほほ笑む(HO1の性格に関わらず)
そして、小さな唇を開けて、言う。
「おはようございます。ご主人様。どうぞ、家にいれてください」
「ご主人様、ご主人様。私(男ならば僕・HO1の一人称は無関係)はご主人様の欲望を満たすために来ました」
「名前は(HO1の名前)です」
そう告げると、人形はHO2に飛びついてくる。
あなたはそれを受け入れるかもしれないし、引きはがそうとするかもしれない。
けれど、気づく。
とれない。
子供のような見た目をしているが、まったく引きはがせない。
重さも子供そのものなのに、腕力だけが違う。うすら寒い感覚を覚えるだろう。
KP向け補足
タイマンはこのあたりで電話をしたことを想定している。2PLならばHO2を先に描写し、その都度情報を出してほしい。
ちなみに人形のSTRは20.アイデアなどKP任意の技能に成功すれば「STRが20である」と描写してもいいだろう。
生物学や医学など「生き物の体のつくり」に関する技能に成功すれば「この細腕にそんな筋肉が詰まっているのは、構造上ありえない」と不安をあおってもいい。
HO1・HO2合流
HO1と2が合流したタイミングなどで、人形は改めて話を始める。
HO2だけを視界に収めて、花が咲くような笑顔を浮かべながら。
「私はなんでもします。なんでもできます。楽しい時はともに笑ってあげる。寂しい時は寄り添ってあげる」
その口上は、そこで終わっていれば、まだマシだったのであろう。
ただ、子供らしい唇は、子供らしからぬ言葉を続けていく。
「腹が立つのならば、その憤りをぶつけてください。詰っても、殴っても、首を絞めても、全部、全部、許してあげる。
性欲が抑えられない日は、それをぶつけてください。どんな方法で犯しても、全部、全部、ぜーんぶ受け止めてあげる。
私はご主人様の欲望をかなえる、そのために生まれてきたのですから」
子供の笑顔は変わらない。
けれどその口上は、おおよそ許されるべきではない種類のことだった。
あなたがその言葉にどんな反応を返しても、その子供の反応は変わらない。
とてとてと歩いて、胸元に飛び込み、両腕で抱き着いてくる。リアクションとしては、乳をねだる子供に似ていた。動作だけは。
合流したHO1と2がどういったやりとりをし、どういった行動をするかは、それぞれの自由だ。
ただ、この人形とマトモな交流は図れない。HO2に対して「自分を性的に愛してくれ」「憂さ晴らしにつかってくれ」と要求するばかりだ。HO2以外の発言には反応すらしない。
KPはどうにかして二人に「とりあえずチューベローズに行く」といった行動をとってほしい。
部屋でできる探索の例
- 「こういった人形が来たという噂がないか探す」…調べ物に適切だと感じる技能の成功
- →「呪いの人形を受け取った」といった都市伝説はあれど、この人形を贈られた人間は、HO2のみ。「他にそういった人間はいないようだ」という形で情報を開示してほしい。藍田が同じものを受け取っているが、誰にも話していないためだ。
- 人形に目星成功・詳しく調べる・服をまくる、など
- →肘と膝に球体関節がある。肌の質感も体温も人そのものだというのに、ひどく不釣り合いで不気味だった。
- 段ボールを確認する
- →ワープロ打ちの手紙が入っている。「これはあなたの望んだもの。ご注文の<HO2様の理想のお人形>です。水洗いも可能。ただし、壊れてしまったら修理できません。どうぞ、末永くかわいがってください」
差出人は「バー・チューベローズ」となっている。
HO2はそんなバーに聞き覚えはないし、もちろん、こんな人形を注文した覚えはない。 - バー・チューベローズについて調べる
- →<ナビゲート><コンピュータ><図書館>成功などで探索者の住む町から歩いて30分程度のところにあるバーだと分かる。ここではバーだとしか分からない。口コミもない。
営業時間は22時〜朝の4時。
*バーの経営はクリーンであり、SM的なイベントを開催しているわけではないからだ。客もあんまり多くない。店内で経営状態が分かるような技能を成功させたならば「流行っているようには見えない」と分かるだろう。
人形とコミュニケーションをとろうとするのでれば、喋る内容は探索者たちの話す内容に限らず、冒頭のような内容ばかりだ。
「自分はHO2の欲望のすべてを受け止めるために生まれた。どこにでもついていく」と繰り返すだけで、シナリオの進行に関係ない。PLが茶番を楽しめるだけだ。
ただ、もしもHO2がそれに「性的な行為」をするのであれば、すべて受け入れる。必要な臓器はすべてそろっている。しかし、「黙って待っていろ」などの、マトモな命令は聞いてくれない。聞いてくれるのは「非人道的なこと」ばかりだ。仮にHO2が「〜を盗んで来い」「〜を傷つけろ」といったことをいうならば、従う。エマの肉体を傷つける・正体をばらす以外の内容ならば。
この冒涜的な人形に課せられた使命は一つ。「HO2の人間性に欠陥がある」と周囲に知らしめることなのだから。
HO2の外出
あなた方が外出しようとすると、例の人形はHO2にこのように要求してくる。
「ご主人様、お外にでるなら、私をだっこしてください」
「ここにおいていかれたら、ずっと、ずっと、ずーっと泣いています」
「ガマンできなくなったら、泣いてしまいます。ねえ、つれていってくれますよね」
連れて行かないのであれば、言葉通り泣きわめく。しかも、かなりの声量で。その様はただの子供にしか見えない。
そのままにしておくのであれば、泣いているだけではなく「痛い」「いい子にする」「殺さないで」「お家に帰りたい」といった文言が混じっていく。
HO2が郊外に住んでいないのであれば、誘拐の疑いがかかる程度に。
そのことをとがめたとしても、人形は悪びれない。人形に意思はなく、プログラム通りに動いているだけなのだから。
どうしてもこの人形を連れて行きたくない場合は、土に埋める、縛りつけて水に沈める、といった手段ならば黙らせることができる。それでも「人形はすさまじい力でHO2にすがりついていたこと」をアイディアなどで思い出させてほしい。
土に埋めた場合、人形は10分後にその馬鹿力で掘り進めて脱出するのだから。
水の場合も「出ないように見張っている」と宣言しないのであれば、窒息する前に縄を引きちぎって出てくる。
探索者が「窒息して死ぬまで押さえつけている」場合は素直に死ぬ。その場合、人型の死体が残るが。この人形はエマの遺伝子と、神話的なAFでできているので、残るのは「エマとよく似た遺伝情報を持った遺体」だ。
後述のイベントでエマと接触した後は「HO2を襲いなさい」「叶わずに死んだら消えなさい」と命令されているので、擬態を解くし、解けて消えるが。
合流・情報の統合で1時間経過。11時に外に出ることを想定している。とはいえ、色々矛盾はあるだろうから、柔軟に対応してほしい。
基本的に「システム的に1か所探索で1時間経過」と伝えてほしい。が、KP裁量で改変してほしい。
改変案
探索者の性格によっては、こんな人形をつれては決して探索したくない、という探索者もいるだろう。タイマンかつKP側がHO2の場合はそれでも構わないが、2PLの場合、それではあまりに暇である。シナリオとしてつまらない。事前に「HO1の幼少期の等身大人形を抱っこして街中歩くハメになる」とHO2のPLに確認し、「それでは探索できない、家に引きこもる」という場合は、以下のように改変してほしい。
あなた方が外出しようとすると、例の人形はHO2にこのように要求してくる。
自身の入っていた段ボールに同梱されていた、革のカバンを指さして。
「ご主人様。お外に行くのであれば、私をこれに入れてください」
「ここにおいていかれたら、ずっと、ずっと、ずーっと泣いています」
「お外に行っても、たまにだっこしてください。
1時間くらいなら、ガマンしますね」
「ガマンできなくなったら、泣いてしまいます。ねえ、つれていってくれますよね」
連れて行かないのであれば、言葉通り泣きわめく。しかも、かなりの声量で。その様はただの子供にしか見えない。
そのままにしておくのであれば、泣いているだけではなく「痛い」「いい子にする」「殺さないで」「お家に帰りたい」といった文言が混じっていく。
HO2が郊外に住んでいないのであれば、誘拐の疑いがかかる程度に。
そのことをとがめたとしても、人形は悪びれない。人形に意思はなく、プログラム通りに動いているだけなのだから。
どうしてもこの人形を連れて行きたくない場合は、土に埋める、縛りつけて水に沈める、といった手段ならば黙らせることができる。それでも「人形はすさまじい力でHO2にすがりついていたこと」をアイディアなどで思い出させてほしい。
土に埋めた場合、人形は10分後にその馬鹿力で掘り進めて脱出するのだから。
水の場合も「出ないように見張っている」と宣言しないのであれば、窒息する前に縄を引きちぎって出てくる。
探索者が「窒息して死ぬまで押さえつけている」場合は素直に死ぬ。その場合、人型の死体が残るが。この人形はエマの遺伝子と、神話的なAFでできているので、残るのは「エマとよく似た遺伝情報を持った遺体」だ。
後述のイベントでエマと接触した後は「HO2を襲いなさい」「叶わずに死んだら消えなさい」と命令されているので、擬態を解くし、解けて消えるが。
合流・情報の統合で1時間経過。11時に外に出ることを想定している。とはいえ、色々矛盾はあるだろうから、柔軟に対応してほしい。
基本的に「システム的に1か所探索で1時間経過」と伝えてほしい。が、KP裁量で改変してほしい。
チューベローズへ
探索者たちがバーの住所にたどり着くと、周辺にあるのは飲み屋やクラブ、風俗店であることが分かる。
バーやクラブの集まったビルの1Fにある、ごくごく小規模な店である。
ただし、今はどうやら営業時間外のようだ。
あなた方が次の行動について迷っていると、HO2に声がかかる。
困ったような顔をして、小学生くらいの大きさの人形を抱いている人物(HO2と逆の性別)だ。
「あの、そのカバン。もしかして、あなたも、…おかしな人形をうけとったりしていますか?」
よく見ればわかるだろう。そのカバンは、HO2が送りつけられたものと同じデザインだ。
「私、藍田と申します。藍田凛」
「あの、変な人形が送られてきて。たしかにチューベローズは言ったことあるけど、常連だけど、…こんなもの、頼んでないのに」
どうやら藍田もとても困っているようだ。
藍田の容姿・心理学情報
容姿は男女ともに「そこそこ整っている」メイクリストである藍田が、その<変装:90>を以て仕上げた結果である。
服装は男性ならば「清潔で大人っぽい」女性ならば「清楚で落ち着いた感じ」といった雰囲気。別にHO2の好みに合わせたわけではない。「そういうのがウケるだろう、選ばれるだろう」という偏見だ。
藍田の恋は一方的な思い込みでできている。それによって導かれる行動も、一方的なものばかりだ。KPの考える最強の「うぜえ勘違い清楚野郎」ロールをどうぞ。
心理学を振るのであれば成功で「どこか嘘の臭いを感じる」失敗ならば「とても必死に見える」といった雰囲気である。
藍田の抱いている人形
藍田の性別とは逆の人形。見た目はHO1とは逆の特徴をかねそなえていることが望ましい。
こちらの人形も同じようにしゃべるし動くし抱っこを要求する。中身もHO2の元に送り付けられたものと変わらない。エマの体細胞と魔術的なAFを組み合わせて作った、人工の原ショゴスだ。
ただし、こちらはエマにより「藍田に(性的に尽くせ)無理ならばずっと傍においてもらっておけ」としか命令されていない。終盤になっても正体を現さない。
藍田は人形の中身を知らない。エマに「魔法の人形を作ってあげる」と言われただけだ。人形の言動に関しては「心底気持ち悪い」とぐったりもしている。
自己紹介が終わると、藍田はおずおずとチューベローズについて説明してくれる。基本的に普通のバーであること。誰でも入れること。ただ、SM趣味の人間が良く集まるということだ。特にイベントを開催したり、大々的にパートナーを探しあったりしているというわけではない。ただ、バーの店長がそういう趣味であるから、自然とそういった人間が集まってきているし、パートナーを探すこともある、といった状態だ、と説明してくれる。
KP向け補足
本来のSMバーとはSM道具を用意してあったり、スタッフによるプレイを楽しんだり、カップルでプレイを楽しんだり、情報収集をする場所である。
一方、チューベローズは「SM趣味の人間が良く集まる」というだけで、実際にSM的な行為を楽しむためのバーではない。出会いの場になることもあるが、そういった趣味の人間の間で話題に上がるほどではない。だからこそ書き込みはないし、どんな技能を使っても「SMバーだ」などという情報は出てこないのだ。エマにSM趣味があり、エマがSMバーに出入りしているため、その趣味で出会った友人が遊びに来ているだけである。
それなのに藍田が「SMバー」という表現を使うのは、HO2への悪意だ。藍田は「HO2がそういう趣味を隠してる」とHO1に思ってほしい。「SMバーに行くのは人に引かれるだろう」と思っている辺り、藍田が本当にSM愛好ではない証拠かもしれない。
エマから話を聞いた後などに、藍田に「SMバーってほどじゃないんじゃないのか」と尋ねるのであれば「元恋人がそういうのが好きで、チューベローズをSMバーと呼んでいたから。そういうものだと思っていた」と嘘をつく。元恋人がSM趣味だったことと、エマの友人の1人だったことは本当だが。チューベローズがそういう店ではないことは知っている。
なお、チューベローズの店長であるエマは魔術師であり、その同志もよく集まっている。が、表沙汰にはなっていないし、このバーで非合法なことをしているわけではない。「エマによる悪事のきっかけ・獲物の物色の場になることはあるが、実行の場ではない」といった位置づけの店だ。藍田は魔術的なことにかかわりはない、エマの暇つぶしの道具に選ばれただけである。
困った顔の藍田は、探索差たちに自分の状況を説明してくる。
「HO1さんと、HO2さんですね。お二人も、この人形を受け取って…差出人にここが書いてあったから来たんですよね?」
「私はここに来たことがあるけど、あの、…こんな人形頼んでないから、困ってしまって」
「…チューベローズを知らない?え、その。あの。…えっと、バーです」
「バーで。その、ある種の趣味の人が集まっています」
「……SM。SMバーなんです」
「私も、あの。いや。元恋人の趣味で。いや、あの、それは別にいいですよね、ハイ」
藍田はさらに続ける。言いずらそうに。
「HO2さんも、あの、お話したことはないですけど、見たことはあります…」
(このことに「そんなことはない」と怒るのであれば、素直に謝る。「ごめんなさい、本人が言うならそうですよね。薄暗いし、きっと見間違いです」といった風に)
「…このお店の前でウロウロしてるのもなんですし、私、実は店長さんと知り合いで。エマさんという人なんですけど…一緒に会いにいきませんか?」
この申し出を受けるのであれば、1時間かけて移動することになる。
この申し出を断るのは自由だ。が、他に手がかりらしいを探しても、手がかりはない。茶番を楽しむことになる。
ちなみに、この時点で藍田と同行せずとも、藍田は探索者たちに連絡先を渡してくる。
エマとの会合(要1時間)
藍田に連れられてやってきたレストランは、どうやら個室があるようだ。その個室の一つで、エマに会えるらしい。
移動中、藍田は探索者に世間話を求めてくる。探索者が積極的に話しかけない場合、話しかける相手はHO1である。「こんな風に相談に乗ってくれる人がいるなんて、HO2さんが羨ましい」といった風に。実際は片思いの相手に話しかけたいだけだが。
「店長はエマという人なんです。とってもきれいな、男の人というか、いわゆるオネエですね。優しい人ですよ。お客さんの相談とかにも乗ってくれますし。HO1さんはそういうことありませんか?」
「あ、いえ。今困ってるのはHO2さんですよね。ごめんなさい。お互い変なことになっちゃいましたね」
レストランにたどり着けば、店員が予約していたという席に案内してくれる。たどり着いた先には、褐色の肌をした男性がいる。確かに女性ものをきて、メイクを施した男性だ。顔立ちからして、インド映画にいそうな雰囲気に見える。
「藍田ちゃんと、そちらのお二人がHO2ちゃんと、HO1ちゃんね。今回は災難だったこと」
「でもねえ、私としても困ってしまうの。知らないわ。お人形をおくった覚えなんて、ないし」
「でも、お人形は可愛いわね」(HO2の人形・藍田の人形を触る)(この時、人形への命令を変えている)
「ウチの名前をかたって誰が得をするのかしら」
「<バー・チューベローズ>としか書いてないなら、うちじゃないって可能性もあるけど。…でも、ねえ。心当たりは、ないようなあるような」
優雅にため息をつくその様子は、困っているように見える。(嘘だが)
人形を見せるのであれば、「HO1ちゃんにそっくりねえ」とコメントする。
藍田の人形に関しては「あら、藍田ちゃんの元カレ(カノ)じゃない。未練、あったの?」と笑う。(事実だ。しかし未練がないことは知っている)
KP向け補足
このイベントの目的は「エマに人形を触らせること」だ。人形は「本来の主人(エマ)が手を触れたのであれば、第二の命令を実行しろ」というプログラムが元々入っている。命令はHO2の場合は「HO2が人形に性的な行為をしないなら、2人きりの時に殺せ」藍田の人形は「なにがおきても動くな」である。
この人形を作ったのはエマだが、人形がそれを伝えることはない。
HO2の家でみせたのと同じ反応をする。(HO2以外の言葉には反応しない)(藍田の持つ人形は、藍田以外に反応しない)
そして、見せても見せなくても、ここで人形はHO2に対して「抱っこ」を要求してくる。
抱いてさえいれば騒がない。抱いていないと騒ぐ。HO2には頑張ってほしい。
その状態で、エマはしばらく探索者の疑問に答えてくれる。ただし、マトモには取り合わない。のらりくらりとごまかすだけだ。
エマ・台詞例
「私のつけてる香水? ああ。いい香りでしょう? そう、これ、チューベローズなの。あとはジャスミン。名前のわりに、バラじゃないのよねえ、びっくりしちゃった。
そうそう、あんまりに妖艶だからねェ「チューベローズの畑の前は恋人で通るな」なーんて言われてたらしいわよぉ。なんで? うふふ、レディに言わせないで」
*チューベローズの香りで盛って我を忘れて性行為にふけるという言い伝えがあった。ちなみに和名は「月下香」月の夜の香りが素晴らしいとたたえられた。
「バー・チューベローズ。…そう珍しい名前でもないと思うんだけど。ここらでは、ウチだけね。でも、本当に知らないの」
「HO2ちゃん? 初対面じゃない? 本人がそう言うなら。としかいえないわねえ。ウチ、来てるの知られたくない人間が多いから。
要はHO1ちゃんがどっちを信じるかというお話。なら、答えなんて、聞くまでもないでしょ?」
「なんでこんな格好してるか? 趣味よ。私が美しいから」(本当にただの趣味だ。しいて言うならば長い髪には魔術的な意味がなくもないが。男でも女でもないことは、魔術的に意味を見出され気味だが。彼のコレは、そういった言い伝えから発展した、純粋な趣味だ)
「不気味? 失礼ねえ」
「キレイ? あ・り・が・と・う」
「なんで心当たりがあるか?
そうねえ、そういうの、詳しいの。昔、昔ね。神様に会ったことがあるのよ。っていったら信じる? いい男だったわねえ、そうそう、ちょうど私みたいな褐色の肌の。まあ、私の方がいい女だけどぉ?
それからおかしなことがあってね。その関係で…ぽーんと大金だけ手に入れちゃったことがあって。もう色々と嫌になったから。素敵なお店を作ってみたの。その時、私の友達に宣伝もしたから、藍田ちゃんの言う通りにSM趣味の人が集まることも、そこそこにあるわねえ」
「神様の名前はなんだったかしらねえ。ニョロだかニャル高だった気がするけど。忘れてしまったわ。忘れさせて頂戴」
*真実を交えた嘘だ。
エマはニャルに会ったことがある。自ら望んで接触の呪文を使い、信者として。生贄を使い、神話的な知識を得るために。
そういった過程で「探索者」という存在とも対立したことがある。その時のことを思い出しつつ、嘘をついている。
あれこれと話をした後、エマはふと何かを思い出したような顔をする。
そして、ためらいがちにこのような提案をしてくる。
(ためらいがちなのも、思い出した顔をしたようなもの嘘なので、心理学で見抜ける)
「ここまできてもらって、知らない、分からない。だけも薄情な話よねェ。これを送ったのはウチじゃあない。でも、心当たりはあるの。
こういう、悪趣味な人形を作る男のコト。それについて、ちょーっと話つけるから、待っててくれない?そう、大体1時間くらい」
「あなたたちが会う? やめといた方がいいわよ。中国語、分かる?(中国語を話せる探索者が来た場合は、その探索者がもたない言語に変更してほしい。そんな男はいないのだから、話させたくないのだ)
気難しいし、大金要求してくるし。セクハラは酷いし。大事なお客さんとそのお友達は会わせられないわァ」
「とりあえず、これ、私の連絡先。悪用しちゃイヤよ」
「いいから、待ってなさいな。このお店で待っててもいいしぃ、お家に帰ってもいいしぃ、車の中っていうのも手でしょうね。でも、それだとせまっ苦しいでしょ、三人。そうねェ。この近くにある公園がおすすめよ。景色がよくて、人気がなくて。昔はハッテン場で」
「ハッテン場なせいで人よりつかなくなったのよォ。ちょうどいいんじゃない?」
公園は確かに人目がない。変な人形をつれていくのはちょうどいいのかもしれない。
そんな怪しいところに行きたくないということはもっともなので、別に行かなくてもいい。
どこに行こうと、発生するイベントは変わらない。
エマの待ち時間(1時間経過)
エマによる調査を待つ間、藍田は探索者たちと行動を共にすることを要求してくる。断ることは可能だ。(1時間の待ち時間は縮められない)話の流れや時間帯次第では、藍田の家に招待することもある。
この一時間の間、探索者たちは人形を抱っこしながらどこかに出かけてもいいし、家に戻って引きこもってもいい。重要なイベントは1時間後まで起きないので、茶番を楽しんでもらってもいいし、「やることがないなら一時間後に飛ばします」でもいい。KP裁量で好きに描写してほしい。
この1時間の間、人形は抱っこさえしていればともかくおとなしいのだから。
藍田の動向を許す場合は、藍田はとももかくHO1に話しかけてくる。PLは大体藍田を怪しむだろうし、探索者もそろそろ怪しむかもしれない。
ただ、藍田が訪ねてくるのは「探索者たちの生活」「探索者たちの馴れ初め」「お互いどこが好きなのか」といった、どうでもいい話ばかりだ。藍田は愛するHO1のことをなんでもいいから聞きたいのである。
というか、このシナリオは「ロールを楽しむシナリオ」だ。存分にKPが聞きたいこと、PLがかたりたいことを聞いてほしい。
公園・描写例
エマから紹介された公園は、確かに人気がなく、薄暗い。トイレの周りに雑木林めいたスペースもある。
道路に面しているが、車通りは少なく、住宅街からもほんの少し遠く、人形が騒いでも人目を集めないかもしれない。
藍田の家・描写例
藍田の家は、小ぎれいなマンションだ。廊下を抜けた先は2LDKで、割と家賃が高そうな印象を受ける。防音性は高そうだ。ここならば人形が騒いでも目立たなかったかもしれない。
キレイに片付いている部屋の中、メイク道具やファッション誌が多く置かれているのが分かる。藍田の趣味か職業に関係があるのかもしれない。
藍田からの話
藍田が同行していた場合は、その流れで。同行していない場合は、HO1の電話に連絡が来る。
「HO1さん。私、一つだけ思い出したことがあるんです。HO2さんの前ではちょっと、言えなくて…。ごめんなさい、2人で話をさせていただきますか?」
その表情は深刻で、HO2がいる場所では口を開いてくれないようだ。
KP向け補足
このイベントの目的は「HO2と人形を二人きりにすること」だ。この話に乗らない場合は、どうにかして他の手段でHO2を一人っきりにしてほしい。
このシナリオは次の「HO2が人形と二人っきりになった際のイベント」以外のイベントが用意されていない。(エマからの電話は待てども待てどもこない、連絡先は嘘ではないが、「今まだ取り込み中なのぉ」と言われる)
HO1と藍田が二人きりになった場合、藍田が気まずそうな顔で口を開く。
「私、思い出したことがあるんです。HO2さんのこと、やっぱりチューベローズでみたことがある。話したことはないけど。お友達数人と一緒だったから、無理やりつれてこられたのかも。でも…」
「でも、やっぱり。何か隠してることがあると思うんです。本人は意識していないかもしれないけど」
「私、この人形、本当気持ち悪くて。でも、なんで、って考えた時、少しだけ。少しだけやましくなりました」
「私の元恋人は、気ままで…いうことを聞いてくれなくて。だから、なんで、と思ったことがあります」
「もっと黙って、言うことを聞いてくれたらいいのに、って」
「それはこんな形じゃあない。そうなんだけど…HO2さんにも、本人には気づかない、なにか…やましいことがあって、こうなったのかな、って」
「一度、2人で話し合ってみた方が…いいんじゃないでしょうか」
KP向け補足
このイベントの目的は「藍田がHO2に難癖をつけすぎではないか」とPLに感じてもらうことだ。
よって、この台詞はほんの一例。KPがその時思う「HO1に片思いをしている相手がHO2の株を下げたい台詞」を考えてほしい。なんなら「あんな人でいいんですか」くらい言ってもいいだろう。
話の途中で物音(HO2が押しつぶされる音)が響くことを想定している。ここで聞き耳を要求すると、ロスト率が跳ね上がる。自動的に音を聞いてもらうことを想定している。