灯を落としてみるその肌は、血の気がなくて白い。
白くて美しい。白くて、少し雪を思い出すから。
がり。
軽く歯を立てたつもりが、と思うけれど、存外痛そうな音が響いた。
「…ごめん」
「…いえ。別にこのくらいすぐ治りますけど。…なんでいきなり噛むんですか…」
「…おいしそうだから?」
「………貴方がそういうことを言うと、冗談やその場しのぎに聞こえないんです。寒気がしました」
「辛辣」
「……智華は」
「え?」
例えば押し倒して脱がしてなめて辱めたらどんな顔をするだろう。
「………じゃ。いこっか。あんまり遅いと君の家は心配するし」
「……え、ええ」
「食いたいくらい?」
「……」
「そんな引いた顔されてもね。本当だから仕方ない」
「だってそしたら君は誰にも見えないし。だから俺は君を傷つけずに済むし。割といいことづくめだなって思う」
「…理性で自制してくださいよ。私はあなたにだけは殺されたくありません」
「だから妥協しているじゃない。そんなことをしたら君は俺を呼ばないし」
「触ってくてくれないし、見てもくれない。
…割とむなしいよね」
「…遥霞」
「なぁに?」
「私はあなたにだけは殺されたくありませんし、その上食べられるなんてまっぴらごめんですが。
触るし見ていますよ」
「…だって綺麗だし」
「…あなたの褒め言葉はどうしてそう空々しいんでしょうね」
「本気なのになあ」
「言動の全てが残念なほどに空々しいんですよね……」
「綺麗だから、怖いんだよねえ」
一層空々しくなるように呟いた。冗談にしてしまえるようにそうした。
智華は何も言わない。
ただ少し眉を寄せて、悲しそうな顔をして、そっと目を閉じた。
こちらを真っ直ぐにみる目が綺麗。だからゆがませてみたくなる。
しゃんと伸びた背中が綺麗。だから跪かせたい。
触るとあたたかい白い肌が綺麗。だから汚れてしまえと思う。
綺麗でなんていないように。
ずっと、傍にいてくれるように。
―――そうしてえるのが後悔だと知っているのに、どうしても。
触れた胸はふにゃふにゃと頼りない。洩れる声とかも、とても。
甘くて優しい、違う。甘やかすための声だと思う。
「…ねえ、智華」
儚くて嫌になる。自分とはまったく違って、非常に嫌になる。
けれど同じものだったら、想わないんだろう。触って心地いいとか、泣きそうな声がくるとか。
「…同じことしてみたらいいんじゃない?」
「これ以上痛々しいことに手をだしたくはありませんので」
いっそ全部腹の中にでも収められたら。
違う、俺の方が、この下で眠れたら、なにより。
白い肌を手の平で撫ぜる。
俺より少し早い鼓動に、そっと目を閉じた。
あとがき
子供できないように使うもの使ってるし。そもそも避妊薬も飲んでたりするんだけど。(今産まれたりしたら絶対にロクなことになれないから)それでも彼女は子供欲しいと思ってるんだよ、という。
決して血のつながった家族にはなれない彼女の意地なのかもしれないし、血の繋がった身内に振り回され続けた彼にそのやり直しをさせたいのかもしれないし…ただ単純に、好きだった証を残したいだけかもしれない。
とてもとても単純なことだけど。中々うまくいかないのがこの二人だと言う話です。
2010/01/20