051:魔法 (UIS・慶+達臣+希羅)

「魔法かなにかだと、たまに思うよ」
「どんなよ」
「食い物のどんどん消える魔法。で、金もばりばり消える魔法」
「…確かに繋がってそうよねぇ、異次元に」
 ひそひそと言いあう達臣と希羅に一瞥も与えず、慶は元気に手を上げる。
「おっちゃん! 塩ラーメン追加!」
 うずたかく積まれたどんぶりの間、明るくおかわりを要求する少年は、周囲の奇異の目線などまったく気にしていなかった。

 ・燃費の悪い男…緋月慶。財布…西園寺達臣。…不幸。


052:機械 (螺旋・祐絵)

 機械じかけのようだ、と言われたことがある。
 その言葉に、反論しようとは思わない。自分でそう思うことはないが、別に他人にそう認識されて困ることもないから。
 けれど。
「お前ああいうこと言われたら怒れよ!」
 他人事だと言うのに、眉を潜めて。わたしよりよほど、嫌そうにそう言う彼が、飽きることなく似たようなことを言うことは。
 少しだけ、不思議だと思った。

 ・機械のようで。機械でなくて。


053:人形 (朝町・メマチ)

「ちょ、ま。お前、本気で俺にそれ着ろっていうのか!?」
「うん、勿論」
 にっこりと笑う磨智。メーは顔を引きつらせた。
 正確には、彼女の手に持つ衣服に怯えた顔を見せる。
「俺、もう、んなもん入るほど小さくは…!」
「あ。大丈夫。サイズ、ちゃんと調節したからv」
 自信満々にない胸を張る恋人に、メーは悲しそうな顔をする。そして、じりじりと下がる。
「…んなことして、楽しいの…?」
「好きなモノを飾り立てたいのは、当たり前じゃない」
 好きなモノ、の一言に顔を真っ赤にした彼が、なすすべなくそれに袖を通すことになるのは、言うまでもない。

 ・君は私の着せ替え人形状態。


054:主従 (UIS・聖那+紫音)

 彼女が人より頭のいい人間だと知っている(そうは見えないことばかりするけれど)
 彼女が人より腕の立つ人間だと知っている(それまで素手の殴り合いで負けたこと、なかったのに)
「…従うよ、お前に」
 だから頭を垂れよう。
 悲しく笑う、私よりほんの少しだけ年上の彼女に。
「そう」
 短く答えて笑う聖那は、やはりどこか寂しそうだった。
 だからこいつを守ろう。
 頭が切れて、強くて。私を助けてくれたこいつに。
 決して後ろを振り返らぬこいつの背中を守り、そうして。
 そうして、こいつが笑えるように、守ろう。

 ・なんだかんだで紫音は聖那には忠実です。


055:魔物 (朝町・かぜこま)

「恋はまるで魔物のようだね」
「なにたそがれてるんですか、かなたさん」
 形の良い眉を潜めて言う風矢に、かなたは曖昧な笑みを浮かべる。
 キッチンに漂う甘いにおいと、その用途に笑みをこぼした彼女は、ぽそりと呟く。
「…っと、人変わったなぁ」
 恋とは恐ろしいよね、小さな小さな囁きは、幸せそうな彼の耳には届かなかった。

 ・ヴァレンタインの風矢とマスター。


056:境界 (UIS・ライセレ)

 超えていけない境界があるとしたら、それを越してしまっているのだと思う。
 血と泥とに汚れたグローブを放り投げる。
 屑かごに吸い込まれたそれを、ぼうっと見つめる。
「…寒ぃなぁ」
 はぁ、と息をつく。その息が白く染まることはない。そう、そんなに寒くないはず。なのに。
「寒ぃ」
 むき出しの地面に尻を落として、はぁ、と息をつく。
 一体いつまでこうしていればいいのやら。肩から流れる血は、とめどなく手を汚す。
 そして、それ以上の傷を負った人間が、1人。遺体と人間との境で苦しんでいる。おれの斬った人間が、細い息を繰り返している。
 赤い血が、地面にしみて。まるで、なにかの境界のように、周囲と隔絶されて。
「…これじゃ、帰れないよなぁ」
 じっと瞼を閉じる。
 瞼の裏に浮かんだ能天気な笑顔に、なぜだか泣きたくなった。

 ・ちょっと昔のライド。彼が飲食店オーナーに転職するまで。浮かんだのは現同居人の顔。


057:奇矯 (螺旋・拓登×祐絵)

 あまり使わない食器というものは、高い位置にしまってしまう。
 ぐいと背伸びして、手を伸ばす。すると、目的の皿をひょいとさらっていく手が一つ。
「拓登」
「ああ」
「ありがとう。
 いつも、助かるわ」
「…んー」
「踏み台いらずで」
「……………そうか」
 肩をがくりと落とした拓登は、そのまま皿をテーブルに置いた。
 …冗談だったのだけど。
 今更そういうのも変だろう。わたしは台所へ向かった。

 ・奇矯な言動、かも。きつい言葉ですよね、踏み台いらず。


058:時間 (朝町・メマチ)

「あっという間にすぎるよなぁ。時間って」
「だからって一日庭の草むしりに従事できるお前って…もの好きつーか…、根気あるよなぁ」
 嫌みではなくしみじみと言うメーに、緋那はふ、と笑う。
「焼き払えば早いとは思うのだが」
「それは止めた方がいいと思う」
「するわけないだろう。雑草以外の草もわりとあるからな」
「目がマジだった…」
 怯えたように身を引くメー。緋那は僅かに眉を潜め、さっぱりと片付いた庭を満足げに見つめた。

 ・緋那の幸せな一日。


059:荒廃 (朝町・ベムヒナ)

「あれを見てると心がすさむ…」
「そんなことを言ってはいけません。彼は真剣ですから」
 囁き合う光龍と風龍に構わず、ベムは黙って部屋の隅で膝を抱える。
「今度は何言われたんだ?」
「そんなに人にハートを着せたいならまずお前がそれを着ればよい、と」
「…着たの?」
「爆笑されてました。彼女も堪えていましたが…まぁ、限界だったんでしょうね」
「…なぁ、風矢」
「なんですか」
「お前、緋那より先に笑い倒しただろう」
「…否定はしません」
 すい、と顔を逸らす彼の顔に、一抹の罪悪感。
 それを珍しく目ざとく見つけた光龍は、じとりと目を座らせた。
 彼らのやりとりに構わず、ベムは膝を抱える。
 想いの人に大爆笑されてちょっぴりだけ傷ついた彼が浮上するには、その想いの人に夕飯だと言われるまでの時間を有した。

 ・荒廃してるのは彼を見てる人達の心つーか、彼の恋心です。


060:呪術 (UIS・ライ←セレ)

「…でも、しようかな」
 窓に映りこんだ自分の姿に、思わず呟く。
 背、いつまでたっても低いし。…胸とか、全然膨らまないし。…色々体操とか、頑張ってるのに。
「セレナ? なにぶつぶつ言ってるんだよ」
 背中からかかった声に、びく、と身体が飛び上がる。ウフフと乾いた笑みが漏れた。
「な、なんですか!? 別に呪術でばいんばいんのナイスバディーになりたいとか思ってませんよぅ!?」
「何の話だ!?」

 ・魔導士な彼女と別にそんなの関係ない彼氏。…ちなみに彼女はむしろ呪術だ大嫌いなのだけど。それにしてもこのお題、魔法との差が分からないの。


061:時計 (UIS・武行+明乃)

 どんなことがあろうと、時計はちくたくと針を進める。無情なまでに、正確に。
「…なぁ、そろそろ昼だし、外出許可」
「却下」
 皆まで言うこともできず、頭に押し付けられたそれがさらに押し付けられる。
「気になるなら、はずしておきましょうか?」
 だって時計とか関係ないものねぇ、と冷ややかな言葉が投げつけられる。ついでに頭に突きつけられた銃口もごりごりと押し付けられる。ああ、冷たいなぁ。妹に銃突きつけられてるって事実に気持ちが冷えるなぁ。
 はぁ、と息をつく。
 諦めて、山とつまれた書類に目を通す。
 もし、時計の針が巻き戻るなら。巻き戻るなら…あの壁時計をかわいー顔して「おにーちゃんにあげる!」とか言ってきた妹に会いたい気もする。
 ちらりと浮かんだ言葉に、ほんのりと目頭が熱くなった。

 ・さぼり魔とそれに振り回される人。たぶん仲良し兄妹。


062:喧嘩 (螺旋・舞華+鈴+成冶)

「鈴の馬鹿ぁ!」
 熱いコーヒをすするオレの耳に、そんな声が届いた。恐る恐る声の方を伺うと、茶髪の少女がなにやら叫んでいた。迷惑だ。
 その姿がとっても知り合いに似ていたことを無視して、一緒に頼んだサンドイッチをぱくつく。あ、やべ。ドレッシング垂れてくるわ。
「馬鹿はお前だろう! 冷たいものばかすか飲むと腹下すぞ! なにより、考えなしに暴飲暴食すると太るっ!」
 そう叫ぶ少女もとっても知り合いに似ているけど、オレは無視した。
 あの年頃の女の子に太るは禁句だよと忠告する義理もないし、僅かに目を潤ませる彼女を見ているのが面倒だったこともある。
 ぱくり、と最後の一口を飲みこんで、コーヒーで流し込む。
 巻き込まれないように、そうっと席を立つ。
 まぁ、あんなことで喧嘩してるんだから平和だよなー…あいつらにしては。
 会計を済ませて帰路に着くオレの背中で、まだくだらない言い争いは続いていた。

 ・ある平和な一日の記録。


063:継承 (UIS・紅也+希羅)

 仕事で組むことになった少女は、1人ずんずん進んでいく。
「…そんなに気負わずとも良いでしょう」
 軽い気持ちで言った言葉に、彼女は静かに目を細めた。鋭く睨んだ。
「…あなたと一緒にしないでください」
 吐き捨てるように言った彼女は、前へと進む足を止めぬまま、呟く。
「継ぐべきものを放棄したあなたと、一緒にしないで―――古凪紅也」
 低い声で紡がれる古凪の名は、ひどく冷たい。
「……別に一緒にしてはないんですけど、ね」
 ああ、でも、確かに違うだろう。その流派の形だけなぞった僕と、今ここにいる彼女とでは。
 家に関わりない場所に来たのは、同じだけれど。
 凛と立つ姿は、彼女の父と良く似ていると、そう思った。

 ・道は離れたけれど、志はそこに。…いや本当紅也と希羅とでも全然立場違うけど。


064:仮初 (螺旋・拓登×祐絵)

 手を伸ばせば、その肩に触れられる。抱き寄せて、その肌に触れて。恋人のような、時間を過ごして。
 けれど。
「………」
 好きだ、と言えない言葉が、胸に詰まって。
 握りしめた手のひらに、短く抓んだ爪が食い込んだ。

 ・仮初の恋人。


065:彼方 (朝町・かな+メー)

「…お前の名前ってさぁ、変な字書くよな」
「彼方、だと一部地域にいっぱいいるからね」
「ふぅん? …でも、そっちの方がいいよな」
 だって、「彼方」じゃ、遠くに行ってしまいそうだ。
 言って笑う愛龍に、かなたはぱちぱちと瞬く。
 そうして、安堵したように笑った。

 ・浮かばなかったので…(苦笑)色々反則な気はしている。


066:失恋 (朝町・かな+メー)

「……裏切られた」
「だ、誰に」
「カカオ…99%の、チョコレート…!」
「…は?」
「ビターは好きだけどこれは違う…なんか色々こえてる…脳天に刺さるぅ…私を裏切ったのねー! 愛してたのにぃ!」
「チョコに告白して逆キレすんなぁー!」

 ・シリアスできそうなものっていじくりたくなきますよね。


067:予兆 (螺旋・拓登+成冶)

 たまに、本当たまにいるよな、ああいう天然なのか意図的に感情殺しちまってるのか分からないの。
 なぁ、わかってるだろう。あの人は前者だ。そして、そちらの方が、きっと救われない。
 思ったところで、あんたが傷つく。のに。
「…兄貴ぃ」
 うまくいくわけねーよ、と言おうとして止めた。
 そんなこと、きっと。本人がなにより分かっている。
「…なんでもないよ」
「そっか」
 オレに向き直った兄は、ふわりと笑った。
 ああ、きっと。この人は、いつか別れる時も、こんな風に笑って。
 思い、オレは目を閉じる。どこか寂しい表情を見ずにすむように。それでも己の気持ちに嘘をつかない兄を、見ずに済むように。

 ・「仮初」とセットでお読みください。その笑顔がなんの予兆なのかはご想像にお任せします。


068:失踪 (UIS・聖那+紫音)

「いなくなっちゃおーかなぁ、って、たまに思うの」
「は?」
「色々面倒になっちゃってぇ。どっかに言っちゃいたくなるのぉ」
「のぉ、じゃないだろう」
「でも、思うのは本当」
 声音にほんの少しだけ真剣なモノを含ませれば、親友の顔から呆れの色が消えた。
 すっと瞼が閉じられて、すぐにそうっと開かれる。
「なら、ついていく」
「…それじゃ失踪とは言わないわね」
 けど、楽しいわね。そちらの方が。
 そう思えているうちは、恐らく。自分は失踪などしないだろうな、とそんなことを思った。

 ・たぶんUISで1,2を争う仲良し。


069:咎人 (UIS・武行+明乃)

 咎とはなんだろう。
 罪を犯したことだろうか。人を傷つけたことだろうか。人を利用したことだろうか。それとも。
「明乃」
   名を呼んでも、答える声はない。
 それとも、そんな道から妹を遠ざけなかったことなのか。
 頭を撫でて、そんなことを思う。俺の所為で腹を5針縫うはめになった妹は、いつものように嫌がることはしない。
「…ならば」
 せめてそれに飲みこまれぬように、力を。
 元より咎より逃げる術など、どこにもなかったのだから。
 いつもより冷たい妹の手を握りしめる。己の細かに震える理由を、決して考えぬままに。

 ・わりと昔の深丞兄妹。お兄さんが珍しくへこんでる。


070:刹那 (朝町・かなた+緋那)

 手を触れてその刹那に崩れるものも、世にはある。
 触らない方がいいものも、あると、わかっているのに。
「けど触ってしまうのは、悲しい人のサガだと思う…」
「それが濡りたてのペンキに触った言い訳か?」
 静かに詰問する緋那。かなたはベンチにくっついていない方の手で、ぽりぽりと頬をかいた。

 ・なんか綺麗そうなお題が全く綺麗じゃない。


071:復讐 (朝町・ベム+風矢)

 ぶはっ、と音がした。
 振り向くと、口元を押さえて肩を震わせる風矢君がいた。
「…ベム」
「なに」
「人の紅茶に砂糖盛って、楽しいか」
「すごく」
 ぼうっとした表情のまま言い切るベム君。風矢君ががたん、と椅子を倒して立ち上がった。
 …殴り合いのケンカに発展しそうな雰囲気に、私は自分のカップを持って立ち上がる。巻き込まれるのが御免だ。
「磨智? 急いでどこいくの?」
「マスターも一緒行く? 危ないよ」
「え?」
 きょとんとする彼女の手を引いて、リビングから遠ざかる。
 その中でなにやら言い争う声は、聞こえないことにした。

 ・色々腹が立って復讐に出たベム。素直に受けた風矢。そして傍観する磨智。


072:胎動 (螺旋)

 さぁ、始めようかと影は言った。
 うん、始めようか、と男は笑った。
「もう一度、生まれておいで」
 囁く声に、答えるものはない。
 まだ、そこには。
 何も生まれていなうけれど。
「生まれておいで」
 闇を孕んで、それははじまる。

 ・螺旋の日々の次の話の予告です(待て)


073:左眼 (UIS・慶)

 かつて名付け親につけられた傷の所為で、左の眼は、失われているのだと言う。正確には、傷ついて使い物にならないのだという。
 だからひどく不便で、歯がゆい。
 けれど。
「………」
 こっちの方が好きだな。
 口の中だけで呟いて、そっとその左眼をなぞる。遠に癒えた傷が、じくりと疼いた気がした。

 ・喋らないとダークになるけど口を開くと台無しな男。


074:拒絶 (UIS・遥霞智華)

 声が枯れていると指摘すれば、なんともないと言われた。無理やり熱を測らせれば、案の定風を引いていた。
 だから、今、彼はぼうっと天井を見つめながら、療養に勤しんでいる。…その顔色は、とことん悪い。
 額を濡らす汗を拭おうと手を伸ばすと、やんわりと振り払われた。間をおかず、おおよそ場にそぐわない言葉が聞こえた。
「愛してるよ」
 言葉と共に、伸ばした手に唇が触れる。熱で乾いた唇。
 嘘つき。
 そう思っているのに、口に出さない私も、本当のことを言わない彼も、突き詰めてしまえば互いが煩わしいのかもしれない。
 分かりあいたくて伸ばした手は、繋ぎ合うことを忘れた。
「愛してる」
 嘘つき、となじる代わりに頷いた。
 愛してるから、離れない。愛しているから、弱音も見せない。なにも、教えずに。なにも、伝えずに。それでも傍に置いておくのだと。
 告げてくるような手に、己の手を重ねる。その途端するりと逃げるそれに、口の中だけで呟いた。
 本当に―――嘘つき。

 ・それは、ゆるやかな拒絶


075:迷路 (朝町・かなた+ベム)

「壁に手をついていくと出れるらしいよね」
「………」
「けど出れないって、なんだろうね。あれだ、きっと人生に迷ってるんだね」
「…………」
「だからきっと出れると思うんだよね、そのうち。そのうち」
「…かなた」
「はいっ」
「無駄口叩くよりは、道、探す」
「…はい」

 ・道に迷ったかなたとベム。なんか主従逆転っぽい。