026:薬物 (螺旋・拓登+祐絵)

 はぁ、と息をつくと、ごほっと咳に変わった。
 風邪気味とまではいかないが、少し喉が痛む。
 だから、訊くだけ訊いてみた。
「お前の作ってる薬ってさぁ。飲むと風邪治ったりする?」
「風邪薬くらいなら、簡単なものなら調合できるけど…」
 洗い物の手を止めて、祐絵は静かに言う。
「普段わたしの売ってる薬は…飲むと、水の中で息ができたり、火につっこめたり…鼻毛が伸びたり手が伸びたりするわ」
「…そういえば、お前の薬、ってそっちの方向だもんな…」
 風邪に効かないことだけはよくわかったよ、と呟くと、洗い物が再開される。
 僅かに寒気が増した気がしたのは、恐らく風邪の所為。だと、思う。

 ・迂闊に飲んだら髪の毛が伸びたりする方向の薬師。



027:墓標 (朝町・メマチ)

 126番地の庭で、磨智はにっこりと微笑んだ。いっそ不穏と評される、凄味のある笑顔で。
「鈍感と浮気者とヘタレとアホの4つの候補があるけど、どれがいい? メー君v」
「なんかよくわからんけど謝るからとりあえず頭踏むな!」
「うふふ。分からないのに謝るなんて、不誠実だなぁ。不誠実も候補に加えとくよv」
「ちょ、ま…!」
 焦りまくった言葉は、最後まで紡がれることなく、土砂の降り注ぐ音にまぎれた。

 ・彼らが一体何の話をしているかは、タイトルで察してください。またなんかいったらしいです。



028:血痕 (UIS・智華+慶)

「なー。智華ぁー。なんか今あんたがくれたコップ、血ぃついてるんだけど」
「返り血なので気にしないでください」
「余計気になるって、それ…!」
「大丈夫ですよ。ちょっと鼻をたたいただけですから」
「…なぁ、さっき、廊下に遥霞転がってたんだけど。服にコーヒー的なシミつくって」
「それは、自業自得です」
 言い切った智華の顔は、いつもの無表情なのにとっても怖かったので、オレは黙って出されたコーヒーをすすった。
 温かいものを飲んでいるのに、ほんの少しだけ胸が冷えた気がした。

 ・誰かの鼻をマグカップで強打した際に出た諸々の跡がついていてもコーヒーはおいしかったです by慶。…ちなみに他の人達はつっこまない気がするよ。



029:廃墟 (朝町・かなた+メー)

「廃墟っていうとなんか冒険の匂いがすると思わないかいメー」
「冒険の匂いっていうかモンスターの匂いがするし方向音痴のくせにんなもん入るからまだ家帰れないんだろうが!」
 吠えられたかなたは涼しい表情でふい、と顔を逸らす。
 しかしその頬に流れるのは一筋の汗。メーは思い切り顔をしかめた。

 ・検索中、どっかの廃墟に迷いこんだ主従。マスターは方向音痴。朝町の廃墟(ダンジョン以外)って色々住んでそうですよね。



030:崩壊 (朝町・メマチ)

 ぼろりと涙がこぼれた。
 一度こぼれたそれは、後から後から流れてくる。水を嫌う身体の中に、こんなにも水分があるのはおかしいのではないだろうか、なんて、どうでもいいことを考えてしまうくらい、それは次々流れていく。
 直前まで言い争っていた相手に、そんな情けない顔を見せるのは癪だ。
 けど、馬鹿みたいにこぼれてくる涙を見るその顔も、情けなくて。
 情けない顔の割に、ぎゅうと掴まれた手が離される気配はない。
 いつも。そんな顔をみていると、意地を張るのが馬鹿らしくなる。
 馬鹿らしくなって、そうして。にこりと笑う。
 濡れた頬に、やけに熱い手が添えられ、涙を拭きとるように温められた。

 ・喧嘩の後の磨智。崩壊してるのはたぶん意地とかそういうもの。



031:悪夢 (朝町・かなた)

 悪夢を見るのに、目をつぶる必要などない。
 真にそう呼ぶべき事象は、概して現実の中に存在するものなのだから。
「…寒い…」
 物理的にも、財布的にも、寒すぎる。
 綺麗に壊れた屋根に、私はそっと目頭を押さえる。
 その犯人たる炎龍と風龍がまだ言い争っていることも、沈む意識には遠かった。

 ・大喧嘩して屋根ふっとばしたベムと風矢。そして悪夢を見るマスター。



032:眩暈 (朝町・かぜこま)

 くらくらと、視界が揺れる。
 ふらふらと、身体が傾ぐ。
「風矢さん!?」
 心配してくれるのは嬉しいけど頭を抱えないでください。当たってます、胸的なものとか。
 というかちゃんとした服来てください。胸元空きすぎだし足出し過ぎです。
 大宇宙だか何だか知らないけど、信じるのも大概にしてくださいよ。
 けれど、そんな彼女だからこそ、なんて。
 やけに熱い頭が、これまた湯だった言葉を紡いだ。

 ・大宇宙の意思に言われてセクシーな彼女を見る→目眩を感じて倒れこむ。…付き合い始めのかぜこま。



033:螺旋 (朝町・ベムヒナ)

 ぐるぐると螺旋のように、疑問が消えない。
 ぐるぐるぐるぐると、まるで変わらないように、景色は繰り返す。
 けれど、登っているのなら。いつか、たどりつくのか。
 この悩みの果てに、なにがあるかなど、知らない。
 行きつく先に誰がいてほしいのか、すら。まだ、答えは遠くて。
 けれど、待ってほしいと、思っているなんて。言えなかった。

 ・気の長い二人。



034:禁忌 (朝町・舞華+鈴)

 狭い部屋にところ狭しと積まれたそれが、どうしても気になった。
 だから、そっと。手を伸ばした。
「嫌ああ! なんかこの本噛みついた!」
「だから触るなって言ったじゃないか!」
 駄目って言われると触りたくなるのよ!
 子供っぽ過ぎる言葉が、ついこぼれた。

 同居初期。どこまでも手間のかかる相棒。



035:喪失 (螺旋・成冶)

 ねぇ、と呼んでみても、答えがない。
 帰ってきても、おかえりとは誰も言わない。
 いつもしゅんしゅんと鳴いていた薬缶は黙りきり。
 コーヒーの匂いのしみついた店内は、どこまでも暗い。
「寒いね」
 父さん、と。言ってみても、もう、二度とかえらない。

 ・父親を亡くした直後の成冶。そこにいた人が、今はいない。



036:鳥籠 (螺旋・拓登→祐絵)

 自分にも他人にも無関心な態度に苛立つ理由を知っている。いつか、そのまま。そのままどこかへふわふわ消えてしまいそうで、怖いのだ。
 命の危機にひんしてもなお、どこか熱のなかった眼差しを知ってしまったから。怖くて怖くて仕方ないのだ。
「…拓登?」
 怪訝そうな声で、名を呼ばれる。けれど、それだけ。それだけで、追求することも、厭うこともなく。背後の俺の顔を伺うでもなく。そのままでいる。
 細すぎる腰を抱いた腕に力を込める。
 そうして、繋げておけたなら。どれだけ。
 籠で鳥をかこむように、そこに押しとどめておけたなら、どれだけ。
 2本しかない腕くらいで、そんなことはできないけれど。
 君を囲って、そうして安堵できたなら、どれだけ。
 抱き込んだ身体に残る血の香りに、瞼の奥が熱くなった気がした。

 ・過去話であって今はもう悟りの境地に入りかけるくらい束縛とかそういうことなくなってるけど。怪我人に抱きつく17歳剣士と抱きつかれても動じない怪我人。でもこの後なにもなかったように二人で仕事に戻ります。



037:傀儡 (遥霞×智華)

 自分では何も決めない。なにも知らぬようにふるまう。ただ従うのみ。傀儡。人形。
「…って、つまらないこと言うよね」
 小耳にはさんだ風評を伝えてみても、彼女は顔色一つ変えない。その様は、確かに。少し人形じみているけれど。
「君のどこが傀儡だって言うんだろうね?」
 俺の全てを操るのは、君だと言うのにね。
 耳朶を噛んで囁けば、嫌そうな溜息が応えた。

 ・少しでも付き合いあれば人間は遥霞の駄目ッぷりと智華のきっついところとか見てるので、決して言いませんが。傍から見るとわりと傀儡っぽいとか言われる人。



038:亡骸 (朝町・かなた+メー)

「あああああああ。ううう、ええええ!」
「何大袈裟に呻いてんの、お前…」
 呻きながら顔を覆う主人に、メーは困ったような顔をする。
「だってこれは私の夢だったんだよ! いわばこれは夢の亡骸!」
「むしろ今のお前がなんかナキガラっぽいよ!」
 床に散らばった外れた宝くじを抱きながら自宅の床へうずくまるかなたへ、メーはどこまでも困ったように叫んだ。

 ・シリアスなことできそうだけどあえて。夢の亡骸らしいです。



039:殺意 (朝町・風矢+かなた)

 ちりちりと肌に焼けるようななにかが突き刺さる。
 ごくり、と唾を飲んでも、乾ききった喉を潤すには足りない。
「なんであなたは私の風評下がるようなことばかり言うんですか? 邪魔したいんですか?」
 緑の目にあるものは、たぶん、ダンジョンの中のモンスターとかから感じるものと同じ感情。
 そう認めるのが悲しくて、私はそっと目を閉じた。

 ・なにか小町さんに言ったかなたと、怒ってる風矢。シリアスなことできそうだけど以下省略。



040:凶刃 (UIS・慶)

 嬉しいとはなんだろう。腹立たしいとはなんだろう。悲しいとはなんだろう。楽しいとはなんだろう。
「助け…っ!」
 怯えるとは、なんだろう。今の標的の浮かべる表情のような、ものなのか。
 そんな感情をかつて全部持っていた気がする。けれど。今、残っているものなど。
 先ほどまで叫んでいた男の喉を潰した感覚だけ。
「なにも」
 分からない。呟いてみる。
 知っていることなど、この胸に巣食う、絶望だけだと、そう思った。

 ・この後名付け親に拾われることでとりあえず恐怖を思い出すことになるのは別の話。



041:楼上 (朝町・かなた)

 例えば塔の楼上にでも登って、そこから全てを見下ろせば。
 自分の暮らすそこが、どんなものだかわかるだろうか。
 それとも、ただ、思うだけか。
 なんでこんなに狭いところで、なんて。

 ・過去話。そうして落ち込んだりしたかなたは広い世界へ家出しましたという。



042:灯台 (朝町・ベムヒナ)

 彼女に会って、全てが変わった。色づいた。
 海の中で灯台でもみつけたように、道が開けた。
 それだけあれば。それだけいれば。それで良いと、思えた。
 けど。どうすれば振り返ってもらえるだろう、と。
 そんな悩みに身を浸すはめになった理由も、また、彼女だった。

 ・それは一条の光のように。



043:砂漠 (朝町・かなた+メー)

「暑いー」
「っていうと、余計に暑いよ」
「死ぬ―」
「死なないって。砂漠にいるわけでもなしに」
「水―」
「はいはい」
「水になりたーい」
「え? …ちょ、マスター! 目ぇ虚ろ! 水! 水―!」

 ・夏バテかなたと甲斐甲斐しい磨智。



044:階段 (螺旋・舞華+成冶)

 とんとん、と軽やかに登っていく少女を見つめる。なんというか、元気だ。オレはそろそろ疲れてきた。
 とん、と舞華が階段を上りきる。そして、振り返り、やけに嬉しげに笑った。
「あら。ここだと成冶さんを見下ろせるわ」
「え? それが?」
「気分いいわぁ」
 にこにこする舞華に、溜息が洩れる。…お気楽だなぁ。
「けど、もう一回下言ってね。まだ、資料運びきれてないし」
「…そーでしたね」

 ・仲良く資料を運ぶ舞華と成冶。なんで、とか。なにを、とか聞いちゃだめです。深く考えてないから。



045:高楼 (朝町・かなた+メー)

 高楼に登って、空を見つめてみた。
 広く高い空が、近く思えて、目に眩しい。
 それを見ていると。
「やっほーって、言いたくならない?」
「それは山だ」
 冷静に突っ込む声が聞こえる。
 その声に、一層空が眩しく思えた。

 ・ほのぼの主従。高楼に登る。



046:浮島

「わぁ☆ 浮島みたーい☆」
「何明るく言ってるんだ! んなことより! すいかー! 待てぇ!」
 叫びながら、メーは波にさらわれるスイカを追っていく。
 焦る彼を笑うかのように、スイカは呑気にぷかぷかと浮いて、流れた。

 ・海に来て。すいかが流れましたという話。…浮かばなかったんですよ、ネタ。



047:都市 (UIS・雅夜)

 都市を作るのに必要なのは、人と文化と、なにより政治。
 その定理から考えるなら、この『街』は都市とは呼べない。
 けれど、都市であると、そう思う。
「だって、ルールはあるものね」
 それが、とても崩れているだけで。



048:遺跡

 遺跡に足を踏み入れると、なんとなく気分が高揚する。
 わくわくと気分が弾み、足が軽くなる。
 そして。
「かなたぁあ! 死ぬなぁあ!」
 トラップにひっかかって死にかけたりするのも、ご愛敬。
 遠くなる愛龍に、大丈夫と言えないことが、ちょっと悲しかった。



049:天空 (朝町・かなた)

 天空に広がる、龍達の翼。
 広い空を埋める、色とりどりの翼。
「…やっぱり、ここは伝説の町だよね」
 夢としか思えない風景が、ここにはあるから。

 ・ただそれだけの話。



050:地下 (朝町・かなた)

 地龍は、地面に接していると、力を増す。
 ならあれか、地下室にいる地龍とか、元気なんだろうか。
 いや、でもなんかそういうのはちがう気がする。人口のモノで囲ってしまったら、きっと駄目だ。
 むしろ地下にいるのは地の精霊とかってイメージだなぁ、知らないけど。
 あ、でも地面で皆で集まってる地龍って、可愛い気がする…
「マスター…なんで私見てそんなにニコニコしてるの?」
「え?」

 ・実際のところどうなんでしょうね。