最近、悪意を感じる。
おもに大宇宙方面から、ひしひしと。
男
そう伝えると、ベムは可愛そうなものを見るような眼で僕を見て、言った。
「ふーん」
「僕も君の立場ならそう言うから、文句は言いません。…けど、少し聞いてくれますか?」
「惚気を?」
「僕が好きなのは小町さんであって大宇宙の悪意だか邪神だかじゃないですよ」
「そう」
頷いて無言を返すベム。
立ち去らないということは、続けてもいいのだと解釈する。
「彼女と湖に行きました。
……やたら切り込みの深い水着を着てきました。
彼女と町に出かけました。
……胸元が無意味なほどに空いてる服を着てきました」
「やっぱり惚気じゃないか、それ」
「最後まで聞いてください。
そりゃ、嬉しいですよ、嬉しくないはずないじゃないですか。男なんですから! 恥ずかしがる姿もかわいーです。抱きしめたいです抱きしめたこともありますが!
けど、それ、セクハラの意志の支持なんですよ!?
嫌がらせですか!?」
「むしろサービスじゃないか」
「…言い方を変えましょう。
緋那さんがどこの馬の骨とも分からない野郎…いや、野郎じゃないかもしれないんですけど、ともかく影も形も見えないのの命ずるまま色々やらされるんですよ。好き勝手な恰好させられるんですよ、腹立ちませんか」
「それは殺意がわくな」
「でしょう!?
ああもう―――大宇宙のわりに細かいところついてくるというか、せせこましいんだよ、やることが!とか色々言えたらどれだけいいか!」
同意を得た僕は、ずいと身を乗り出す。いや、同意得ても事態は解決しないけど、ノリで。
けれど、ベムは冷めた顔で続けた。
「押し倒しちゃえばいいとも思うけどね」
「……」
「いいじゃないか、好き合った仲なら。好き合った仲なら。好き合った仲なら…」
「ベム、すみません。僕ちょっと無神経でした、だから泣かないでください…」
なにやらうずくまり始めたベムの肩をそっと叩く。…じ、自慢のつもりで言ったんじゃないのに、今回は…
しばらく謝ると、彼はガバリと顔をあげた。
「…僕のことはどうでもいい。…君はなぜそれを選ばない」
うっすらと涙の滲んだ瞳に、思わずうっと呻く。
触ろうとすると絶妙なタイミングで振り向かれるから―――
それもあるのだけれども、でも。
「…負けた気がするじゃないですか」
「いつから戦ってたの、君とその未確認生物」
「未確認生物ですか、それはいい。生きていたらぶっ飛ばしますけどね。できないからタチが悪いですね」
「答えになっていない。なんで戦うの」
「…なにを言われようが、それを選んでいる時点で彼女の意志だ、とも思いますが。…やっぱり嫌なんですよ、大宇宙だかなんだかの意志に躍らせれるの。彼女と楽しく―――ならまだ許せますが、僕が一方的に、というのは気に入りません。
ならどうなれば満足だ、と訊かれても困りますが。…それに屈するのはとても嫌です」
鼻を鳴らして言えば、ベムが小さく笑う。
「君らしい話だね」
「…今、僕のこと馬鹿にしたでしょう、君」
「気の所為。被害妄想」
淡々と言うベムに、僕は溜息をつく。
…ああもう、本当に。
それを聞くための手段でも探してみようか。
疲れた頭は、主義に反する言葉さえ浮かばせる。
けれどもそんな彼女が嫌なのかと訊かれれば首をふるのだからタチが悪い。
「…もう、本当に…もっと大人しくなるといいんですけどね、邪神…」
「邪神決定なんだ」
当たり前でしょう、と僕は呟いた。
あとがき
実際大宇宙の意志にもてあそばれるのも書きたいです。てか書きます。(爽やかな笑顔で)
2009/09/11