正体発覚
コンコン
部屋のドアをノックする音。
ここを訪れるものはほとんどいない。
なぜならこちらから呼ぶ確立が圧倒的に高いからだ。
だから呼んでいない客がくる事は珍しい。
そう思いながらも、遥霞はドアをあける。
そこには雅がいた。
「好きだな、ここに来るの。」
「別に好きなわけじゃねぇよ。ただ、ちょっと聞きたいことがあるだけだ。」
本当に嫌なのか、遥霞とは目を合わさずに雅は言う。
「で、聞きたい事って?」
そういいながら、遥霞は雅を部屋に入れる。
「白蓮がいなくなったんだ。見てないか?」
「いや、見てないな。智華は?」
「私も見てませんね。」
「そっか・・・・」
2人の言葉を聞いて雅は肩を落とす。
朝起きたら白蓮がいなくなった事に気づき、いろいろな人に聞いた。
希羅にも慶にも竜臣にも。
竜臣の部屋を訪ねたときはなぜかドア越しに答えられたが。
「流には聞いたのか?」
「あいつに聞いたら喜ぶだけだろ。」
雅の言葉に2人はものすごく納得する。
流にだけ殺意を向ける猫がいなくなったと知れば、本人は大喜びだろう。
「探そうとしても俺来たばかりだからここら辺のことよく知らないし・・・・」
「ここら辺のことよく知ってるのは雅輝だな。」
「やめてくれ。」
いつも薔薇を持って現れてくる男の名前を出されて雅は思わず拒絶反応を示してしまう。
「猫だったらすぐに部屋に戻ってくるんじゃないのか?」
「猫にはそういう習性があるらしいですからね。」
「んー・・・・」
「部屋で暇潰してたらそのうち戻ってくるだろ。」
雅は2人の言葉を聞いて部屋をあとにした。
雅が自分の部屋に戻ったころ、ちょうど希羅と慶が雅の部屋を訪れた。
「白蓮は見つかった?」
「いや、まだだ。」
雅は2人を部屋に入れながら答える。
「やっぱあれだよ。流がとって食おうとしてるんだよ。」
「そんなわけないでしょ。あんたじゃないんだから。」
「じゃあなんで今日は雅に付きまとってないんだ?」
慶の言葉に希羅は雅に視線を向ける。
「俺も見てねえんだ。ケータイに電話しても繋がんねえし。」
あ、怪しすぎ・・・・!!
雅の言葉に2人は同時にそう思った。
雅からの電話を取らない流など2人にしてみれば考えられないことなのだ。
「やっぱ竜臣が気になるんだよなー。玄関から2メートル離れたところで話したし。」
それは流の嫉妬を恐れてるからだ。
また2人は同時に思った。
雅関係の被害者はいつも竜臣。
しかも怪我が致命傷に近い辺り本気で殺そうとしているのだろう。
それを恐れての配慮だった。
「・・・・やっぱ流に聞くしかねえのかなぁ・・・・・」
「知ってても教えてくれなさそうだけどね。」
今まで流が白蓮にされてきた事を思ったら、たとえ知っていたとしても教えてくれそうになかった。
「やっぱ外探すしかねーか・・・・・」
「手伝うわよ。」
「悪いな。」
「俺も俺も!!んで、無事に白蓮見つかったらなんか食うもん作ってくれ!」
「お前の頭はそれだけか・・・・・」
呆れたようにいうものの、心遣いがうれしく、雅の顔がほころぶ。
「びゃぁくぅれぇ〜〜ん〜〜〜〜」
「そんなやる気のない声出さないでよ。」
あれから数時間、3人は街中を探し回っていた。
しかしいっこうに白蓮は見つからない。
「しょーがねーだろー。腹減ってんだから。」
「お前はどれほど食うつもりだ?」
ちなみに慶が数時間前にした食事は、ハンバーガー、スパゲッティ、ステーキ、味噌煮込みうどん、わんこそば230杯、
フライドチキン、おにぎり5個という驚異的な量だった。
「だってあれから1時間も経ってんだぜ?普通腹減るだろ。」
「あんなに食って1時間しか経ってないのに腹減るのはお前くらいだよ。」
「ちょっとまって!!」
急に希羅が雅と慶の足を止める。
「どうしたんだ?」
「あそこにとても嫌なものが横たわってる・・・・」
「嫌なもの?」
希羅の言葉に、2人は希羅の視線の先に目を向ける。
そこには、ボロボロになって地面と接吻をしている御門雅輝の姿があった。
3人は近寄るまいとして、踵を返して道を戻ろうとした。
しかしすぐに、
「雅さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」
後ろから雅輝が追いかけてきた。
名前を呼ばれた雅は、ちらりと後ろのほうを見てみる。
そして雅は後ろを振り返ったことを後悔する事となる。
なぜかというと、雅輝がものすごいスピードで、まるで貞○のように地面を這いながら自分に近づいてきていたからである。
走り出そうとしたときにはもう遅く、雅輝は雅の足にしがみついた。
「な、なんだよてめえ!!???」
「雅さぁぁん!慰めてくださぁい!!!」
しがみつかれた事で転んだ雅の体に雅輝は這い上がってくる。
「雅さん!見てください、この傷!!」
「俺には関係ねえだろっ!!」
雅は女、雅輝は男。
雅が力勝負で雅輝に勝てるはずもなく、それを悟った雅輝は調子に乗って雅を地面に組み敷く。
「ああ・・・雅さんと熱い口付けをすればこんな傷すぐに癒えるのに・・・・」
「ぎゃあぁ〜〜〜〜〜!!!??やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
雅輝が顔を近づけてきて、雅はメチャクチャに叫ぶ。
「雅!!!」
希羅が助けようと駆け出すより早く、雅輝の顔面を誰かが蹴り、雅輝の体が数m先まで吹っ飛ぶ。
「「「え????」」」
雅、希羅、慶の3人の声が重なる。
雅のそばには見知らぬ青年。
白のような銀のような色の少し長めの髪の毛に、金色に輝く瞳。
誰も見たことのない人物だった。
「良かったね、雅。唇奪われなくて。」
その青年はにっこりときれいに笑う。
「・・・・・どなた様・・・・?」
雅は、なぜか自分の名前を知っているその人物に名前を尋ねる。
「そっか。この姿で会うのは初めてだもんね。僕は・・・白蓮だよ、雅。」
・・・・・・・・・・ハイ?
「ねえ、あいつ頭いかれてんじゃない?」
「多分いかれてるぜ。いかれ度MAXだな。」
少し離れたところで希羅と慶がこそこそと話す。
「は?白蓮・・・・?いや、でも白蓮は猫だし・・・・」
雅が少し遅れてもっともな事を言う。
「んー・・・・なんて説明すればいいのかなぁ。本当の姿見てもらったほうが早いかな?」
すると白蓮と名乗った青年はゆっくりと猫の姿に変わっていった。
そしてその次は小さい子供、その次はさらに小さい妖精のような姿になった。
「えぇ?・・・・・何の生き物だ?これ?」
雅は妖精になった白蓮を指差しながら希羅と慶に問い掛ける。
「私が知るわけないでしょ。」
「ティンカーベル?ピーターパンか?」
雅と同様、2人の頭の上にも?が浮かんでいる。
「ひどいなぁ。正真正銘妖精でしょ?見てもわからない?」
雅の周りを飛び回り、困ったような笑顔を浮かべる。
「・・・・ということで、白蓮は妖精らしいんだ。」
雅は白蓮を連れ帰り、遥霞と智華に状況説明をして、白蓮の正体を話す。
「ということでって言われてもなぁ。俺にどうしろと?」
なるべく・・・というか絶対面倒を被りたくないといった感じに、遥霞は顔をしかめる。
「この世界に妖精っているのか?」
「実際いるだろ、お前の前に。」
雅の質問に、遥霞はめんどくさそうに答える。
この世界では本当に不思議なことが起こる。
しかし、妖精がいるとはとても思わなかった。
「それより・・・・白蓮はメスじゃありませんでしたっけ?」
しばらく黙っていた智華が口を開いた。
「それはねー、メス猫のほうがかわいがってもらえるかなぁと思ったからv」
今は小さい子供になっている白蓮がかわいらしく智華の疑問に答えた。
その態度を見て、遥霞は白蓮に銃口を向ける。
「クソガキ・・・・・智華をたぶらかすつもりか?」
おぞましいほどの殺気を放ちながら、銃の安全装置をはずす。
「んーん。そっちのお姉さんもかわいいと思うけど―、やっぱり僕は雅がいいなv」
白蓮は雅の方を向いてにっこりと笑う。
「ここまで雅にアタックしてるのに流が出てこないなんて不気味ね・・・」
「そうだな・・・今日雪でも降るんじゃねえ?」
いまだに姿をあらわさない流のことを思い出して、2人は薄気味悪さを感じた。
「ああ、流のことか。あいつなら明日まで帰ってこないぞ。仕事やらせてるからな。」
2人の会話を聞いて、遥霞が流が現れない理由を説明する。
「いつの間に・・・・」
「なんだ?寂しいのか?いつも邪魔者扱いしてるみたいだから長くかかる仕事やらせたんだが。」
「だ、誰も寂しいなんていってねえだろ!!!!??///」
遥霞の言葉を、雅は赤面しながら否定する。
「わかりやすいんだよ、お前。」
「それをわかっててそういうこと言うあんたは最悪よね。」
いつもの事ながら腹黒い事をする遥霞に向かって、希羅はため息交じりの言葉を口にする。
「寂しくなんかないもんねーv雅には僕がついてるもんvvv」
いつのまにか青年の姿になっていた白蓮が、とてもかわいらしい言葉を吐きながら雅に抱きつく。
「雅・・・・・あんた流が抱きつくと暴れるくせにそいつに抱きつかれるのはOKなんだな・・・・」
慶がふと思った事を口にする。
「んー・・・・元が妖精だってことを考えるとどう反応していいかわからん・・・・・・」
いまだきつく抱きついている白蓮に目を向けながら、雅は困ったように言う。
「えー、僕、1人の男として見られてないの?」
白蓮は雅に抱きついたまましゅんとする。
この光景を流が見ていたら瞬殺だろう。
「別にそういうわけじゃねえけど・・・・・・なんつーかなぁ・・・・・実感が沸かない・・・」
「ふふ。そのうち沸くようになるよvこれからもよろしくね?」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!これからもよろしくって・・・・・・あんたこれからも雅の部屋に居座るつもりなの!!?」
白蓮の言葉にひっかかりを感じた希羅は、ストップをかける。
「え?当たり前でしょ?僕は雅のペットなんだから。」
白蓮は希羅の言葉に至極当然のように答える。
「あんた妖精でしょ――!!それ以前に、青年の姿にもなるわけだし・・・・」
「あれ、もしかして僕のたくらみばれちゃったかな?」
そういいつつも、余裕の笑みを希羅に向ける。
「ちょっ・・・・・雅!今すぐ捨てなさい!!こいつを!!!直ちに!!!!」
「え!?捨てるって・・・・・・何ごみで?」
「僕ごみ扱い!!??」
雅のごみ発言に白蓮は盛大にショックを受ける。
「大丈夫だって。雅には何もしないよ。実際今まで手出さなかったでしょ?」
「でも雅のベッドに入ってたじゃない。」
何の企みもない事を証明しようとする白蓮の言葉を希羅がすぐさま切り捨てた。
「あれは猫の姿だったし、寝るところがなかったからだよ。ね、雅。」
「まあ・・・・そうだな。」
「雅!あんたわかってんの!?白蓮とこれから生活をともにするということは!!
この青年の姿になる可能性があるってことなのよ!!」
「それぐらいわかってるよ。」
何をそんなに怒ってるんだ。という顔をしながら雅は答える。
「いい?よーく考えるのよ。もし、流がこの青年の姿の白蓮を見たらどうなると思う?」
雅は一回白蓮を見てから、考え込む。
「大暴れ・・・・・・だな・・・・・」
「でしょ?」
2人は暗い面持ちでうなずきあう。
「あーあのやたら雅にべたべたしてる人?大丈夫だよ。僕、絶対負けないもん。」
人のことは言えないと思うが、やたら自身ありげに白蓮は「負けない宣言」をした。
「うー・・・・じゃ、大丈夫かなぁ・・・・・?」
「うん、大丈夫大丈夫vv」
「ちょっと雅!!!」
「・・・・・皆さん大変ですね。」
「てゆうか早く帰れよ・・・・・」
「なあー、雅、飯はぁ?」
明日、流が帰ってきてものすごいことが起こる事をこのときは誰も知らなかった・・・・・