可愛い訪問者


ある日、雅が街で買い物をして帰ろうとしているところにバックにバラを背負ったストーカーが現れ、
そいつをやっとの事で追い払い、自分の部屋に戻ってきたとき。
部屋のドアをあけると、足元に見知らぬものがあった。



「〜♪」
次の日の朝、ピッキングが成功して雅の部屋に侵入した流は、雅のベッドルームへと向かっていた。
部屋のドアを静かにあけて、雅が寝ているベッドへと近づく。
「雅、朝だよ〜。」
小声でささやいてみる。
しかし、起きる気配はない。
相当熟睡しているようだ。
流はまず、左手を布団の中に入れる。
何事もなく、順調に行くと思ったそのとき、

カプッ

「カプ?」
布団の中に入れた左手の中指に鋭い痛みが走り、1度布団から手を出してみる。
中指からは血がだらだらと流れていた。
流はそっと布団をめくってみる。
そこには、明らかに流に敵意を向けて、毛を逆立てて構えている子猫がいた。
「猫・・・・?」
はて、これは一体どういうことかと、流は思考をめぐらす。
しかし、雅が猫を飼っているなどという話は聞いたことがない。
「雅、雅、朝だよ。起きて。」
雅にこのことを聞いてみようと、雅を起こそうと試みる。
「んぅ〜・・・・眠い・・・・から無理・・・・・・」
寝ぼけた声でそういうと、寝返りを打って流に背中を向ける。
「もう9時だよ。そろそろ起きないと。」
「・・・・・・zzZ」
雅の体をゆすってみても、起きない。
その間も子猫は、毛を逆立て、「フーッ」という声を出している。
「・・・・・あ、そうだ。」
流は雅にかかっている布団を半分くらいめくると、雅の脇腹へと手を伸ばす。
そして、軽くくすぐってみる。
んやぁっ!!???
雅は甲高い声をあげ、飛び起きる。
「雅〜、起きた?」
「てってめ・・・何やって・・・・・」
いるはずのない流の登場に、雅は口をパクパクとさせる。
さっき声をかけられた事は覚えていないようだ。
「だって雅起きないんだも〜ん。それより、この猫何?やたら俺に敵意向けてるんだけど・・・・」
流は雅の隣にいる、未だに自分に敵意を向けている子猫に目を向ける。
「ああ、こいつは・・・・・」
雅が説明しようと口を開いたときだった。
子猫が流の顔に飛びつき、見事な引っかき傷を残す。
「あ・・・・・・」
・・・・っんの・・・・・猫の分際で――!!!!!!
流が猫に炎をぶつけようと、身構える。
「待て、流!!相手は子猫だぞ!!??」
雅は冷や汗を流しながら流を止める。
「放せ、雅!!俺はこいつを焼かないと気がおさまらない!!!」
「とにかくお前部屋でろ!!」
半強制的に、流は雅の部屋から追い出される。
しばらくすると、服を着替えて、子猫を抱えた雅がでてきた。
子猫はおとなしく雅の腕の中におさまっているどころか、気持ちよさそうにごろごろと喉まで鳴らしている。
その様子に流はまた切れそうになった。
「・・・・・雅・・・・これは一体どういうことなの・・・・・?(怒)」
「あー・・・・話は智華達のところにいってからでいいか?(汗)」

ヤベ・・・流マジで切れてる・・・・・

このままでは本当に子猫を殺しかねないと思った雅は、少し流と間を取りながら智華達のもとへ向かった。




「・・・・ほう、珍しい。2人からここに来るなんてね。」
最初に2人を向かえたのは、いつものごとく東 遥霞だった。
それも、珍しいものでもみるかのような表情付きで。
「智華にちょっと用事あるんだけど・・・・・・」
「もしかしてその子猫の事じゃないよね?」
遥霞に指を指され、雅はぎくりとする。
「ま、まあそんなとこ・・・・・・」
「別に相談するのは自由だけど。流、とりあえずその殺気やめてくれないかな。」
子猫に対して、ありえないほどの殺気を向けている流に、一言いっておく。
それでも殺気を放つのをやめない流を、雅は肘で軽く小突く。
流が殺気を消したところで、やっと2人は部屋に入れてもらえた。
「子猫?」
雅に相談された智華は、疑問の言葉を紡ぐ。
「ああ、俺動物の事とかよくわかんねえから、智華なら分かるかなぁと思って。」
「何でそういう結論に至ったんですか。」
なんとなく。智華は動物好きそうだから。」
「で、その猫は一体どこから拾ってきたの?」
いらいらした様子で、流が雅に聞く。
先程から雅の腕の中でくつろいでいる猫の様子をみて、面白い気分になどなれるはずもなかった。
「拾ったんじゃねえ。昨日部屋に戻ったらいたんだ。」
「へー。また図々しい事してるね、その猫は。
「動物に嫉妬するなよ、流。」
子猫にじっとりとした視線を送っている流に、遥霞が横から突っ込みを入れる。
「雅さんはその猫を飼いたいと?」
「ああ。でもどうやって飼えばいいかわかんねえ。」
「まずは寝場所を作らないといけませんね。」
「食いもんは?」
「キャットフードとかミルクとかじゃないですか?」
「それより、名前は決めたのか?」
「・・・・・」
遥霞の言葉に雅ははっとする。
「そんなの無名で充分だよ、無名で。」
「かわいそうだろ。」
「じゃー、みんな呼んでみよっか♪」
という事で希羅、竜臣、慶の3人までもが集められた。
「へー可愛いじゃない。」
「雅にも女らしいところあるんだな。」
「うるせえ。」
希羅と竜臣が、順番に子猫を抱き上げる。
子猫はおとなしく、されるがままになっていた。
「こいつ、うまいのか?」
慶が子猫を抱き上げて、まじまじと見る。
慶の発言にその場の全員が目を丸くした。
「な、何いってんだ、お前・・・・・」
「え?こいつ食いもんじゃないのか?」
きょとんとして慶は雅の顔をみる。
慶の言葉に危険を感じた雅は、さりげなく慶の手から子猫を取り上げる。
「で、この猫の名前をみんなで決めようと?」
「だからむめ「流。」」
流の言葉を、雅が怒るようにさえぎる。
「・・・・・ていうか・・・・・流のその顔の傷ってもしかしてその猫にやられたのか?」
竜臣が、流の顔の引っかき傷を見て言う。
「・・・・・そうだよ。おまけに指も噛まれたしね。」
「ダサッ・・・・・・」
「えぇ!?お前指まで噛まれたのか?」
流の言葉に、雅は驚いて子猫を見る。
依然、子猫は気持ちよさそうに雅の腕の中におさまっている。
「あんた一体何をしたのよ。」
「別に。俺はただ雅の部屋に忍び込んで雅の添い寝をしようとしただけだよ。」
おい。
「そんなの自業自得じゃない。」
雅はなぜ、朝、流が自分の部屋にいたのか分かり、額に青筋を浮かべ、希羅は呆れの言葉を漏らす。
「つーかそれって犯罪じゃ・・・・・」
「竜臣、そんなの今頃の話だろ。」
「おい、コントは終わったか?」
遥霞が話の趣旨がずれている5人に声をかける。
「名前、どうするんですか?」
「メスだよな、これ。」
「ミケ。」
「ありきたりすぎ。」
「やっぱり可愛い名前がいいわよね。」
「じゃあ、タンホワタン!!」
再び、慶に全員の視線が向けられる。
「食いもんかよ!!」
「あんたそれ以外に脳ないわけ?」
「えー、うまいぞ、タンホワタン。」
「そういう問題じゃないだろ・・・・」
慶の発言に一区切りつけたところで、全員がまた考え込む。
「智華とかv」
やめてください。
遥霞の発言は、早くも智華の拒否の言葉によって切り捨てられた。
「あ・・・・」
「どうしたの、雅?」
急に雅が小さく声を漏らす。
「なんかいい名前思いついたのか?」
「いや、別に・・・・・気にしないでくれ。」
「何よ、気になるじゃない。」
「いってみろよ。」
「いいんだ。好きな名前だけど、聞くたびに悲しくなりそうだから。」
そういうと、雅は苦笑する。
流には雅が考えた名前に思い当たりがあった。
それは、自分にも関係する事だから。
「流もなんかいい名前考えろよ。」
「俺はそんな猫のために頭働かせるなんてゴメンだね。」
「流・・・・・拗ねんなよ。
「誰が拗ねてるだと!!??」
「さー、男共の喧嘩はほっといて私たちは名前考えてましょう。」
いつのまにか言い争いをし始めた流達から少し離れたところに避難し、猫の名前を考える。
「そういえばその猫、真っ白ね。」
「そうだな。」
「ミルクってのは?」
「んー・・・」
「シロじゃ犬っぽいですからね。」
「漢字の名前も結構いいよね。」
「あ!じゃあ、白蓮ってのは?」
「いいですね。」
「雅がどう思うかによるけどね。」
3人の視線が、雅に集まる。
「白蓮・・・・ああ、俺もいいと思う。」
「じゃ、決定ね!」
そして、子猫は『白蓮』と名づけられた。
白蓮は自分に名前がついたことがわかりうれしいのか、うれしそうに雅の腕の中で雅の胸に擦り寄っている。
「おい、お前ら。人んちでいつまで喧嘩してるつもりだ。」
遥霞は3人の言い争いを止めるべく、数発、3人に向けて発砲する。
「っぶねえな!!ちけえよ!!当たるところだっただろ!!??」
「俺、こめかみにかすったんだけど・・・・・(バクバク)」
「・・・・名前は決め終わったの?」
「ああ。」
3人が雅達に視線を向けると、女3人で白蓮と戯れていた。
傍からみればほほえましい光景。
しかし、そう思わない人物がここには2人いた。
「あのくそ猫・・・・この期に及んでまだ雅にべたべたとくっついてやがる・・・!!!
「智華・・・・・俺より猫の方がいいのか・・・・?
約1名、どうみたらそういう思考にいくのかは謎だが、とにかく2人とも白蓮に嫉妬している。
遥霞にいたっては最初の方で動物に嫉妬するな、と、流に告げたばかりだ。
大人気ないことこの上ない。
「雅、もうそいつの名前は決まったんだろ?だったら買い物いこ―よ。」
流は雅にかまってもらおうと、雅を後ろから抱きしめる。
「はな・・・・・白蓮!!?」
「放せ。」そう言うつもりだった。
しかし、それより速く、白蓮が雅の腕から飛び出した。
白蓮が、流の顔に飛びつき、新たな引っかき傷を作る。
「うわっ・・・・」
「痛そー・・・・」
「相当嫌われてるわね。」
・・・っのくそ猫―――――!!!!!!
「流!!やめろってば!!!」
「さ、智華。危ないからあっち行こう。」
この日から、流にだけ過剰反応する雅の頼もしい番犬ならぬ番猫が仲間に加わった。

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