「先に絡んできたのそっちだろーが!」
背を向ける少年に、青年がは目を座らせて吠えた。
じりじりと熱い太陽の下、今日も今日とて飽きずにぎゃあぎゃあともめている風龍と光龍を見、取り込んだ洗濯物を抱えていた少女はぽつりと呟く。
「メー」
「なんだよ」
「お前、風矢が嫌いか?」
「あ?」
それは、きっと。
「…そりゃ、あんだけ色々言われて好きなわけねえじゃん」
唇を尖らせるメーに、緋那は小さく頷いて同意を示す。
だが、瞳の中の疑問符が消えることもない。
「私は嫌いかと訊いているのだが」
「…嫌いつーか、なあ…」
いつになく不思議そうに尋ねられ、メーは言葉を探すように黙り込む。
そして、小さく頷き、言った。
「嫌いってぇか、ムカつくんだよ。とりあえず回りくどいってえか厭味ったらしい敬語とか。こっち見下してくるとことか。いちいちつっかってくるとか。
正直、2,3発殴りたい」
やはり嫌いなんじゃないか、と言いたげな緋那に、けどさ、と言葉を継ぐ。
「あいつがその必要もないのに殴られてたりしたら、その相手殴るな。その程度には嫌いじゃない」
言い切ると、彼女は小さく首を傾げる。不思議そうに。
「…分かるような分からないような、話だな」
「…そうかぁ?」
彼はその反応にこそ不思議そうに首を傾げる。
「…つーかいきなりなんだよ。変なこと聞くなよ」
「別にどうというわけじゃないんだけどな。あれほど毎日言い争っていたら飽きてもいいものだと思っただけだ」
「別に好きで言い争ってるわけじゃねえ」
「そのようだ。…まあ、どうでもいいことだよ。ごめんな」
「謝られることでもねえよ」
小さく呟けば、彼女はそれもそうかと頷き、洗濯物を抱えた家の中へと歩いて行った。
一人庭に残されたメーは、静かに空を見上げ、問いの答えを探し続ける。
その昔。まだ、彼の主と二人きりで過ごしていた頃。
このまま世界に二人きりでも、別にかまわないと思っていた。
それは長いこと変わらなかったし、変わらないようにともがいても、いた。
彼女のことを失いたくはなかった。失わぬようにと、変化を嫌った。
結局、“欲しい”存在ができた時に、それは終わりを告げていたのだけど―――気づくのには、随分と時間がかかった。
かの風龍にあったのも、気づかずにいた頃だ。気づこうともせずに、ただただ平穏を求めていた頃。
だから―――どう思ってるかと問われれば、別にどうとも、と答えるのが正しい。けれど―――
「……でもなぁ」
一緒に暮らしていてば、その中で育まれるモノもある。
メーにとってそれは仲間意識であるし、こじゃれた言い方をすれば絆なのかもしれない。
だから、今はどうでもいいとは思っていない。
好きか嫌いかで訊かれたら嫌いだけれど、別にだからと言って不幸になってほしいわけでも、ない。
「…変かね、これ」
普通だと思うけどなぁ。
小さな小さな呟きは、誰に聞かれることもなく消えた。
あとがき
乾さんが「メー君にとって風矢君はどんな存在ですか」と訊かれていたので、回答から湧いて出てきた小話です。
つきつめてしまえばメーは磨智(とマスター)さえいりゃ他はどうでもいいんですけど。
壊れパロでもあるまいし、そんなにつきつめているわけではなく。嫌いじゃない、腹はたつけど…みたいな感じです、たぶん。