年は16,7くらい。赤い髪と瞳の少女がこちらを見やる。
腕まくりした白いシャツに長い紺色のスカート。姿勢が良いおかげで、実際よりすらりと背が高く映る綺麗な少女。
「かなた。ちょっといいか」
人化の結果そんな見た目をとった緋那は、とても深刻な顔で私に家計簿を差し出した。
よにん暮らし その4
わあ緋那ちゃんはえらいなあこんなの書いてたんだー報告してくれてるから知ってたけど―。
うん、報告はもらってるから、すごく、わかるんだよ言いたいとは。
「……この開くと魔物のいそうな恐ろしい書物がなんでしょうか緋那様」
「かなた。悪いが今お前と掛け合い漫才している暇はないんだ。―――開いてくれ」
ボケようとしたけど無駄でした。
仕方なく、ページを開く。
恐る恐る、がくがく震える指にカツを入れて。
結果。
「緋那さん」
「なんだ」
「家計簿が緋那みたいな色してるのがいっぱいあるんだけど」
「色だけじゃないぞ。属性まで似た。…我が家の家計は火の車だ」
目をそらしたい事実をずばっと切り込まれました。
緋那はしっかりものだなまったくもう。あははははは。あははははは。はは。はははははははははははは。
「………かなた。私は、お前に、酷なお願いをしようとしている」
「いや緋那。きっと私も、同じ結論に達してる…」
その結論は、朝町の理を思えば至極当然のこと。
私は、本当ならもっと早くにたどり着かなきゃいけなかった結論。
「私もう防具買わないよ……」
戦闘で勝てば武器が壊れる。
戦闘で負ければ武具が壊れる。
―――それをとってもよく表してる家計簿に、いろんな意味で涙出た。
「つまりこれからお前は空身でサンドバックに転身、か…」
「メー君、サンドバックって! もっとかっこよくいってよ!」
「つまりマスターは裸の勇者…」
「服まではがないでよ磨智ちゃん! 着るよ!?」
「―――別に敗北数が多いから、ってわけじゃない。高いんだ武器防具は。だからそこまで気を落とすことないよ」
「……緋那ちゃんは優しいね」
とどめ刺したけどね。
リビングでテーブル囲んで、三対の瞳に囲まれて。
私の心に吹き抜ける冷たい風、みたいな。おかしいな、最近暑いのに。どうしてこんなに寒いのか。ははははは。
「まあ、いいじゃん。お前最近は結構頑丈だ」
「…戦闘系だからな腐っても」
そしてミドルクラスにはなったからな。自力は上がってきている感じ。いやまったく。やってみるもんだね。
お金と転職の書ってアイテムがないから、最上職の一つであるトレジャーハンター(目標)にはなれてないけどさ。
「そこで腐るのがマスターなんだねぇ…」
「ああ。そこで自虐に走るな」
う。女の子たちから正論が来た。
最近とっても仲良しさんのタッグが胸に来る。正論だから胸に来る。
「…とっとと強くなりますええ」
そしてお金を稼ぎ楽をさせてあげねば。
このままじゃ緋那とかにまた「いつもすまねぇねえ」とか言いたくなってしまう。
それはいわねぇ約束だろとは、いつまでたっても返ってこないだろう。真顔で頷かれてしまう。
「…んなに思いつめんなよ、かなた」
「…メー君」
面倒そうに腕ぐみしたまま、億劫そうな態度で。
それでも軽いその言葉に、ちょっとだけ救われる。
「お前がスライムに負けるダメ主でも、石につまずいて死ぬアホでも腹減らしてぐずぐずするヘタレでも、俺たち見捨ててねーだろ。これからも見捨てねぇ。
この後何回血だるまになろうと、ちゃんと蘇生つれてってやるから安心しろ」
「メー君の馬鹿! へたれ! 失言王!」
「本当のことを言っただけだろ!」
ああすべて本当にあったことですが!
そして見捨てない発言は嬉しいですが!
でもさあ、ほかにいいようないのかよ!?
あるよね!
「……磨智。今日はレバニラでも作ろう」
「ああ。ホウレンソウにもいっぱいらしいよ、鉄分」
ああこっちでも私がナチュラルに大量出血の未来を予想されてる!?
うちの龍は主を主扱いせず、私の立場はどこにいくのか。
―――その疑問の答えは貧血患者だったっぽいよ、ふふ。
ひどいなあ、と言い返したいところですが。
全然言いかえせないので、ホウレンソウは胡麻と一緒に食べるのが好きですとリクエストを出しておいた。