『かなた! 遅い!』
「蘇生から帰ったら従者がなんか涙目な謎」
最近いきつけになった協会を出ると、メーが吠えていた。
割といつも通りなので、特に気にせずに一緒に帰ることにした。
ふたり暮らし その3
―――いやまあ。気にはしないけど。
まだなんかかりかりしてるし、聞いてはおこうか。
「どうしたんだ、メー君や。なにかしたの」
『…お前が遅いから俺が絡まれてたんだよ』
「からまれるって」
『あの、着物の変な闇竜!』
「ああ。あの美しいお姉さま」
今お世話になってきた乾さんのところの…名前は確かシワコさん。
人の姿をとっていて、すごくきれい。黒髪長髪着物の美人、ジャスティス!
けどあの人か。あの人がメーに絡む光景か。
…見た目はこう、爬虫類とかが好きな美人に見えるんだろうな。
「…ん。でもそれのなにが問題?」
からむっていっても、まさか抱きついたりされたわけでもないだろーし。
私はともかく、彼女は龍だ。
同じ種族の性別違う相手に、そんな。ねぇ。
『なにって…落ち着かないっていうかさ。あの龍変な龍じゃん』
そんな、ねぇ。と思うのだけれども。
彼の反応は煮え切らない。煮え切らないというか、いっそ過剰だ。
教会を出るときもひらひらと手をふってくれる彼女に、思い切り嫌な顔してたし。
これは…あるいは。
「えー。落ち着かないのはぁ。メー君がぁ。むっつりなすけべだからなんじゃぁ。ないのぉー?」
『なんだそのだらっだらしたしゃべり方は!』
「君をからかうための口調さぁ。
ひゅーひゅー。美人のおねーさんにからまれるなんて。すてきー」
『あほなこというな!』
「世界の心理だろう!?」
『まさかのマジ顔!?』
あるいは本気でむっつりなスケベなんだろうかと思った私の龍は、驚いたような声を出しましたとさ。
…本当に、わかりやすい奴だなぁ。
でもなんで私の気持ちというか、あの魅力を理解できないのか。
「そりゃマジ顔にもなるだろ。いいじゃないか、シワコさん。
いいじゃないか、和服美人」
ミステリアスで素敵。
繰り返してそう主張すると、今度は苦い声。
『…かなた。あのさ。かなたは女なんだよな』
苦いというか。お説教でもする感じに、こちらを睨んできている。
睨まれても、うなづくしかない。
「うん。女だよ」
『女がそういうこというな!』
「女がどうとか男がどうとか女々しいメー君だなあ…」
『黙れ変態マスター!』
頷くしかないし、呆れるしかない私に、従者は口うるさい。
…保守的なやつめ。いや。そういう話題が嫌いなのかな。もしや女の子が嫌いなのかな。
たまに野生の龍と遭遇したりして、一度いいよられているのをみたことあるけど。とことん困ってて…ともかく赤くなって…最終的には石に逃げ込み………
…あれは嫌いというよりへたれだろう。
うむ、へたれ。つまりいまはあれだ。ええい、まったく。自分があたふたするからって見苦しいな!ってやつ。いや面白いけどね!
「はっはっは! いいのか! 私が変態なら君は変態の従者だよ!」
『威張んな開き直るな! その色々アレなところを、直せ!』
面白いから今日も笑う私に、元気なつっこみが入る。
最近すっかり板についた、彼との日常だった。