病める時も、健やかなる時も
NPC反応表
NPCの反応をまとめているが、シナリオの進捗に合わせて好きに内容をいじってほしい。
NPCは大きく分けて「相馬に好意的なレストランスタッフ」「相馬がクセのある人物だと思っているその他のスタッフ」「留美に好意的な演奏スタッフ」「なにもしらない客」がいる。
噂話一覧
噂話1…レストランのスタッフ・相馬に好意的・留美をよく思っていない
「相馬さんは、頼りになる人ですね。スタッフの話をよく聞いてくれる。
聞くだけじゃなく、解決してくれますよ。レストランで働くスタッフは、みんな一度はお世話になってるんじゃないかな」
「今交際を申し込んでいる人は、その、付き合ってる人がいるからって断ってるらしいけど…、本当にいるのかしら。誰か教えてくれないし…。相馬さんが本気じゃないとか、そういうことを考えて断ってるんじゃないかしら?」
「…相馬さん、かっこいいですからね。年は離れてますけど」
「言い寄られてる人? …すごくきれいですよ」
噂話2…レストランのスタッフ・相馬に好意的・留美を気の毒がっている
「相馬さんはともかく頼りになる、仕事のできる人だから。悪い気はしないんじゃないかな。
でも、あんなふうにみんなの前で好意的っぽいこといわれたら、困るかもしれませんね」
「別におかしなこととか、セクハラとかされてるわけではないみたいだけど。でも、相馬さんのファンの女の子の間で、いろいろ言われてるからさ…。
本人には何も言ってないみたいだけど。そういうのって、空気で伝わるでしょう?」
噂話3…レストランスタッフ・相馬に好意的・留美に敵意がある
「相馬さん、まだあの子にこだわってるの?」
「そうみたいよ」
「なんであんなにこだわるの? っていうか、あの子、なんで断ってるわけ?」
「なんでって、そりゃあその気がないからでしょ?」
「ふ−ん。いい身分ね。あの子、美人だけどそれだけじゃん。化粧も濃いしさ。絶対お高くとまってる」
「あんた、それ、それこそ美人をひがんでるだけでしょ。やめなさいよ、みっともない」
*なにかしらの技能クリティカル・もしくはKPが伝えたい場合
「あの人、アメリカにいたころ男もてあそんでたって話だし?」
「は?」
「あの人をとりあって、男二人が撃ち合ったらしいわよ? それのせいでこっちに逃げ帰ってきた、って話」
「あんたそんなの、どこから聞いたのよ…。いい加減になさい、みっともない」
(この噂を流しているのは相馬である。相馬は留美を孤立させ、自分を頼るように仕向けたいのだ。アメリカで起こったことは彼の目的に大変便利だった)
噂話4…レストラン以外のスタッフ・中立
「レストラン部門のことはあまりわかりませんが、そうですね。最近空気がおかしい」
「レストランのほうのスタッフが、ピリピリしていますね」
「話題の中心にいるのは…キレイな女性なんですよ」
「それだけでなく、演奏もたくみ。だから外部からも人気が高くて…やっかみを受けやすい立場なんでしょうね」
「見ていて、少し気の毒だ」
*喫茶店店長のみ
「…彼女は、ここで指輪を大事そうに見ていたことがありました」
「しあわせそうで、だから私はうまくいってほしいんです。二人のこと、よろしくお願いしますね」
噂話5…客・音楽が好き
「最近、ここのフルート奏者が有名なんです。ネットでひっそりと、って形だけど」
「ツアーも人気だし、ごはんもおいしいし。いい船ですね」
「ああ。でも、あんまり美人だと大変ですね。目が合うと魂が抜かれる、なんて訳の分からない噂もたてられてるみたいですよ? 笑っちゃいますね」
真部信也の証言
真部の立場は「戸川の絶対的な味方」だ。相馬のことをそれなりに慕ってもいるが「女性というものは狭い部屋で異性と二人きりな時点でプレッシャーであろう。それが自分に言い寄る相手ならなおさら」と中々冷静なものの見方をしている。
戸川と留美の交際を知ったきっかけは「戸川が留美とのツーショット写真待ち受けにしてるのうっかり見ちゃった」なので、戸川のうかつさは心配している。彼がいなきゃ早々にばれていた恐れもある。本シナリオに探索者が巻き込まれることになったキッカケ件、留美の人生的には影の功労者である。
相馬と留美の様子
「チーフは、別にみんなの前で『付き合ってくれ』っていってるわけじゃないんです。でも好意を隠さない。みんなの前で言うわけですよ『困ったことがあれば何でも相談してくれ』『いつでも君の力になろう』ってね」
「あと、レストランのスタッフにシフト表を渡すのは、チーフの仕事で…それ、本来はみんなのいるところで、みんなにまとめて、なんですけど。大野竹さんには毎回毎回呼び出して手渡しなんですよ」
「呼び出して手渡しのスタッフは、ほかにもいますよ? みんなに渡すとき、いなかった、とかね。…でもそれが六か月も続いたら不自然でしょ。2か月目で噂になりました」
「スタッフの間で何とも言えない空気が流れ始めました。直接的な嫌がらせはないみたいですけど。所謂ひそひそ話。…演奏と配膳をかねているスタッフと、俺みたいな配膳だけのスタッフの間には、元々ミゾありましたしね。演奏スタッフは気取ってる、とか。…そういうこという人達は、元から大野竹さんが嫌いだったんだと思いますよ」
「それが相馬さんまでとられたとなったら…どういう空気になるか、わかるでしょう」
「で、孤立した大野竹さんにチーフは言うわけです。みんなの前でね。『困っているなら何でも相談に乗ろう』『いつでも頼ってくれ』って」
「…チーフ、自分が構えばかまうほど、大野竹さんが孤立するの、狙ってるんじゃないのかな…」
「自分に頼らせたいんじゃないっすか? アレはそういうパワハラですって」
留美についてどう思うか
「キレイで仕事熱心な人ですよね。戸川がべた惚れの。…どこそこがス好きー。とかは言われませんけど。もう空気が甘い甘い…」
「…戸川が利用されてるんじゃないかって思ったこともあったけどな。大野竹さん、モテるからさ。彼氏がいるっていっときゃあ、断る方便になるだろ? 戸川はそうやって利用されてるんじゃないか、って。そう思ったことがあるけど……」
「……戸川がアレだけ惚れぬいてる相手、疑いたくはないっすね」
戸川についてどう思うか
「てんぱりすぎじゃないか、って思うけど。そのくらいでちょうどいいかもしれないな」
「直接的な嫌がらせないにしてもさ、人の悪意とか、嫉妬とか…パワハラとか。受けてると疲れるじゃん」
「大野竹さん。最近顔色が白くてさ。見てて痛々しい」
「…嫌いな相手にはそれがまたシャクにさわるらしいけどな。よわぶってるんだってさ。弱らせてるのはチーフだろって話だよ…」
留美の反応表
「チーフ…相馬さんには、正直迷惑しています」
「それ以上に怖い。何度も断っているのに、あきらめない。付き合っている人がいるといっているんですが…それが晃一としられたとき、危害を加えられるのではないかと、怖いんです」
これ以降、留美は探索者に何かを尋ねられるなら素直に答える。
戸川と相馬が来るまでこの部屋にいてもらわねば困るのである。
探索者を巻き込んだことに罪悪感はあるので、相馬に依頼をしていること・自分の体の変化以外は嘘をつかない。
もしも探索者が無理やり服をひん剥けばその時は深きものへの変貌をみたことへの正気度喪失が入る。
相馬を怖がる理由・戸川に真相を伏せていた理由
「私はアメリカにいました。3年前まで。日本で生まれ育ちましたが、母がアメリカの出で…慕わしいから、あちらに留学していた」
「大学を卒業して、働いていた楽団もあちらです。でも、ある時。二人の男性に…その、言い寄られした」
「二人はとても、仲が良くて…こういってはなんですが、ゲームの商品にでもなったような気分だった。二人でもりあがっているんだもの。今日は自分のほうが私と目が合った。昨日は自分のほうが多く話した、なんて。…どちらも断りましたよ」
「そんなことが続いた日のことでした。その二人が、銃を取り出して撃ち合ったらしいんです」
「私を取り合って、撃ち合ったらしいんです」
「あの二人がそんなことをするなんて、信じられなかったけど…お見舞いに、いきました」
「病院のベッドの上、それぞれお見舞いにいった彼らは、私を恨んでいる目をしていた」
「周りに馬鹿なことをしたと、ずいぶんと言われたようで…、私のような女にひっかかるからだ、とずいぶんいわれたそうです」
「相馬さんに、その、言い寄られた時。あの二人を思い出しました」
「…もし、もしもそのせいで危ない目にあったとき…晃一も私を恨むのかと、怖いんです。
でも、コウは優しい人だから……危ない目にあっても、大丈夫だよ、とかいいそうで…それはそれで…怖いんです」
「私はあの人が怖い。コウが傷つくのが怖い。だから、…だから黙っていましたが、その結果がこんな風に皆さんをまきこんだんですね…」
彼女がアメリカでのエピソードで職場恋愛に苦い思いを抱いていること・相馬を怖がっていることは嘘ではない。
戸川が傷つくのをなにより嫌っているのも、嘘ではない。
化粧が濃い理由はなにか
「チーフとトラブルがおきてから、あまり寝れていないんです。だから、ごまかすために、つい」
「晃一、そのことでも心配させてしまって…本当に、やさしい人なの」
嘘だ。彼女は「起きている間に深きものに近づく」「晃一の前で顔にも鱗が出たらどうしよう」という強迫観念・おびえから化粧を濃くしている。
心理学に成功すれば<隠し事をしている><何かにおびえている>といった情報になるだろう。
相馬をどう思っているか
「こんなことになる前は、頼りになる、いい上司だと…」
「…そう思っていたから、少し、裏切られた気持ちになりますね」
嘘ではない。留美は基本的に相馬が恐ろしい。利用している今も、その気持ちに変わりはない。
ついでに戸川のほうが万倍いい男だと思ってるため、相馬と戸川を比較するとちょっとだけ怒る。相馬の馬は当て馬の馬。
顔に関しても戸川のほうが良いと思ってる。よいというか「私が好きなのは晃一の顔」
なぜ戸川と付き合っているか
「晃一は優しいでしょう。人が痛いと、自分のことのように痛いって顔をするの。…そういうところが、大好き」
「ちょっと抜けてるけど、かわいいし…突然プロポーズされたのは、びっくりしたし、ちょっと怒りましたけどね。
自分の人生なんだから、もっときちんと考えて決めなきゃダメですよね。本当、かわいい人」
「私に会ったときも、深く考えずに面倒なことをしていましたからね。…外出先でヒールが折れた私を、助けてくれたんです。あの人。同僚なの、気づいてなかったみたいですけど」
「…その場でお店に走って、靴をかってきてくれたんです。汗だくなりながら。靴擦れもしてるでしょうと、絆創膏も差し出して。
お礼を言おうとしたけど、すぐに走って行っちゃって。こっちの名前も聞かないでいってしまって」
「…それで、彼、その日遅刻したらしいですよ」
「…お人よしなんだから」
なれそめとその時の感想は嘘ではない。
だが、心理学成功で「彼女が戸川のやさしさに不安を抱いている」ことがわかる。
留美は戸川を殺したくない。深きものにはしたくない。生きてほしい。
けれど、優しく人好きのする戸川が、自分ではない誰かに愛される未来が嫌で仕方ないのである。
なんの疑いもなく「戸川は人に愛される」と思っているのは彼女の恋心ゆえであり、彼が簡単に留美を忘れられると思っているのは、彼女の卑屈さだ。
戸川に生きてほしい。生きて幸せになってほしい。けれどずっと自分のことを思ってほしい。…それはこの一連の留美の行動の動機である。
整形について聞くのならば
なにかしらの交渉技能に成功する・話したほうがスムーズという場面になれば、彼女は整形をしていることを認める。
無理して隠す情報ではないのである。
「整形? …ああ、していますよ」
「できればコウには、言わないでくれませんか」
「他の人はいいけど、コウには…コウはそれで私を嫌わないでしょうが、知られて楽しいことではないので」
「……整形したのは、高校卒業の直後。…あの時、私、日本に戻るつもりなかったから。最後にしていったの」
「美しさは力で、私は力が欲しかったから」
「私の顔は母に似ていて…私は母が好きでしたが」
「…つりあいがとれていないと、よく言われていました。
父はとても美しい人で、母は並みといったところだったから」
「母は私が10の時に失踪して…その時も言われましたね。
つり合いが取れていない。だからいなくなった。心を病んだのだろう、と」
「父はそれを聞くたび、言った人に怒っていましたが…すべてに怒っていられるわけじゃ、ありませんから。なにしろ言っていたのは私の祖母です。父の目がつかないところでは、何度も言われました」
「それを聞くたびに、思ったんです。
美しさは力で、私は強くなりたいと。
……母のことが、大好きだったから。鏡を見て、置いて行かれたのを思い出すのも、つらかったですしね」
「でも。その前に、晃一に会っていれば、整形はしなかったでしょうね」
「彼に嘘をついている罪悪感、感じずにすんだから」
「顔が違うことより、ずっとうそをついていたことを知られるのが、今、何より嫌なんです」
整形の一連の流れで、留美は一切嘘をつかない。
母のことを慕っているからこそ似ている顔を見るのがつらかった。戸川にそれを知られて、嘘をついていたと思われたくない。
すべて彼女の本心である。
留美の服を脱がす
留美は交渉技能では決して脱がないし、香水の理由を語らない。
しかし、ステータスはこの時点で人のままだ。PLが強く望むなら、組付き・STR対抗など戦闘技能を使い拘束。服を脱がすこともできる。
彼女の腹があらわになる。
白く、やわらかい女の皮膚。その腰のくびれは、彼女の努力をうかがわせるに十分だ。
ただ、その腹の中心はおおよそ人らしいのものではない。
ぬめぬめと光り、灰色がかった緑の皮膚が張り付いている。皮膚というよりは鱗が張り付いている。
人の体にこのようなものが張り付いた光景を目的したあなた方の正気はゆるがされることだろう。
「…晃一には、言わないでください」
「お願いします、ほかのことは何でもいいから…彼にだけは言わないで」
女の目に涙はない。怒りもない。
ただ、乾ききった目の奥には、深い絶望だけがあった。
「原因が、わからないんです。この後どうなるかも、わからない。ただ、解決するまで晃一には言わないで。…お願いします」
戸川にこの件を知られたくないのは留美の本心。ただし、彼女はすでに己が遠からず深きものになることを受け入れている。
泣きもわめきもしないが、ともかく戸川にだけは黙っていてくれと繰り返す。
探索者がそれでも戸川に伝えることを選んだ場合、イベントが前倒しになる。
戸川が事態を飲み込む前に相馬が乱入し、戦闘がおこる。この時、相馬の銃弾を一発窓にKP権限で窓に当てておいてほしい。あとで留美が飛び込む穴だ。
戦闘後も戸川が生きていれば、サロンルーム内にて彼女は自殺しようとする→留美の反応まとめ
その際、KPはPLのロールが落ち着いた時点で適当に爆発を起こしてほしい。
それに探索者が反応している間に、留美は一人で相馬の銃弾による穴からガラスを割り、海に飛び込む。
生還報酬は<SAN値1d6・深きものの皮膚を間近で見たことによる神話技能+1>だ。
相馬竜介の証言
ここでまとめるのは、相馬を確保し、陸に戻った後探索者が相馬と会話することを望んだ時の反応だ。
冷静に考えると警察に引き渡されているが、都合上警察がまだ来ていないのである。面倒なら警察に早め来てもらえばいい。
相馬はシナリオ開始6か月前から留美に言い寄っている。
留美がスタッフとして働いていたのは2年間。1年半スルーだったのに急に言い寄り始めたことに、特に理由は設定していない。
真剣にリハーサルする姿を美しいと思ったタイミングに、たまたま相馬の恋人が切れていたとか、そういう「ちょっとしたタイミングと縁の妙」である。
(相馬は結婚する気はさらさらないが世話してくれる女を絶やさないタイプ)
あとはフラれてるうちにムキになってハマった。
なぜ銃を持っていたのか
「昔の友人に、譲ってもらいました」
「彼女の願いをかなえるのに、ちょうどいいと思いまして」
嘘ではない。シナリオ上サイレンサー付きの銃があった方が盛り上がるので都合上昔の悪い仲間に融通してもらっている。
KP裁量でもっとどす黒い背景を用意しても問題ない(神話事象と彼は一切の無関係だが)。この時重要となるのは、探索者の生死・動きがどうであれ、彼はこの件で無事に逮捕されることである。
彼女の願いとは
「彼女の願いは彼女の願いだ。彼女が言った。彼女が願った。愛する者の前で、自分を殺してくれと」
「愛する女がそう言うのです。かなえてあげるのは、男の甲斐性でしょう」
「人を殺す罪悪感。…ああ、ないとは言いませんが。それより大切なことがあっただけですよ」
本心である。彼は留美にそう願われたことを心の底から喜んだ。
責任能力もある。思考を放棄しているわけではない。選民思想はあるだろう。
これを正気としてアナウンスするかどうかは、KP判断にお任せする。
彼のこの思考回路は、精神病院に通おうと完璧には治らないが。
留美が何者かを知っているか
「興味がありません」
「ただ、選ばれたのは私だ。あの女の願いをかなえられるのは私だ。
彼ではなく、ね」
相馬は戸川をひどく凡庸な人間だと見下している。
特別な存在である留美にはふさわしくないと思っている。
留美のことを特別だととらえる理由は、その美貌であり、その演奏の才能で有り、自分の関心を引いたこと。
相馬の世界の中心は自分だ。彼の中では自分だけが価値を持つ。
ゆえに、彼は留美に利用されても自己陶酔の世界で生きるだけである。誰のことも恨まない。恨む価値を見出していないのである。
留美の告白
陸に戻った留美は、腹に生えた鱗が増え始めていることに気づく。
同時に、彼女の中で声が聞こえ始める。
人間と交配したいという声が。人間としての意識を保っている彼女にとって、その相手は戸川以外にあり得ない。交配し、自分と同じものにしてしまいたいという欲求が生まれる。
けれど彼を化け物になどしたくない。絶望した彼女がとった手段は、戸川にメールを送り、目の前で海に沈むことである。
探索者を見つけ、種明かしをするのは、探索者を巻き込んだことへの罪悪感。許してほしいとも、理解してほしいとも思わないが。死ぬ前の遺書の代わりのようなものである。
あるいは、もっと単純に。1秒でも長く、戸川と一緒にいたかっただけである。探索者がいれば、自分が正気を失い戸川を連れて行こうとしても、とめてくれるだろうという意識があるのだろう。
「私の母が、失踪した話はしたでしょう? その時思ったんです。美しいというものは力だと。同時に、愛情とは、もろいものだと」
「もろくて、儚いものだから。きっと、私がいなくなったらなくなってしまうでしょう? そんなのは嫌。そんなのは嫌だから、私、チーフにお願いしたんです」
「コウの目の前で、私を殺して、と」
「そうすれば、晃一は絶対に私を忘れない。痛くて辛くて、忘れられないでしょう? 優しい人だもの」
なぜそんなことを
「私、母に会ったんです。魚の化け物になった母が言うんです。私もこうなると。
人から正気を奪う薬を差し出して、母は言いました。
愛した人と、正しくお別れをしなさいと」
「それは、母のように黙っていなくなること? 違う。私にとっては絶対に違う」
「私は、晃一に忘れないでほしい。一生、どんなことをしても。忘れないでほしいの」
「ずっと一緒にいたかった。永遠に一緒にいたかった。
それが無理なら、せめて、永遠に思ってほしいだけよ」
相馬に対する罪悪感は
「悪いことをしたと、思いますけど…」
「あの人、いつも楽しそう。…自分ひとりで盛り上がって、勝手にこうしたんです。…そこまで罪悪感を感じる必要もないでしょ」
「あの人は…アメリカのあの二人と一緒。私はゲームの商品です。あの人の人生のトロフィーです」
目の前で死ねば戸川が傷つく
「……そうね。……その通りですね」
「でも私には、これしかなかった」
人として生きる手段を探せ・深きものでも一緒にいればいい
「簡単に言わないでくださいよ」
「声がするのよ。ずっと、声が。皮膚にコレが出始めたころから、声がする。どんどんどんどん強くなる…」
「人を呼べと。同じものにしろと。そうして増えろと。愛するものをつれていけと!」
「私は、晃一を海の底になんてつれていきたくない」
「そんなことしたくないから、そうなる前に消えるのよ」
殺してやる
「ありがとう。…あの人よりあなたに頼めばよかったわね」
(抵抗はしない。この時点で彼女の耐久は人のままである。戸川は止めるが、彼には人を傷つけるための技能もなく、探索者を殺せるような精神はない。留美をかばって殴るくらいだ)
描写例(探索者が殺す場合)
あなたは、人ならざるものへと変わろうとする女の首に刃を添える。
刃を添えればわかる。そこはあの船にいた時より、少し色が変わっている。わずかにぬめり、おそらくほどなくして鱗が生えるのだろう。
留美は抵抗しない。ただ、拘束された戸川にほんの少し名残惜し気な目線を送り、そっと目を閉じる。
白い瞼が月明かりに生える。長いまつげもまた、同様に。
白く、やわらかく、地上の光を照り返す。
そうできるうちに、あなたは手を動かす。
わずかな抵抗を持って引き裂かれた喉から出る血液は、赤い。
あなたがたとえ日常的に人を殺める立場にいたとしても、そうでなくとも。生理的嫌悪からは逃れられないだろう。
正気度喪失…0/1d3
呼吸をやめた女は、一拍置いて崩れ落ちる。
赤く、人の血を流したまま地に伏せる。
その姿を、彼女の愛した男が見つめている。
ボロボロと涙を流す彼が、彼女を呼ぶ声が響いた。
描写例(戸川に殺させる場合)
条件は「戸川に関する説得・言いくるめ・その他KPが適正だと感じる技能にクリティカル」
あなた方の見ている前で、戸川はゆっくりとナイフを留美へと向ける。
背中を見せた彼の表情はわからない。ただ、全身はカタカタと細かく震え、わずかな嗚咽が聞こえる。その表情が絶望に染まっていることは、想像に難くない。
それでも、彼は彼女へとナイフを突き刺す。
一拍置いて、ふらりと女が地面へと倒れこむ。
生きるのをやめた瞳が、あなた方のほうを刹那見やる。
あなた方がたとえ日常的に人を殺める立場にいたとしても、そうでなくとも。生理的嫌悪からは逃れられないだろう。あるいは、そのようなものよりも。死にゆく女が幸福そうに微笑むことにこそ、嫌悪を覚えるのかもしれない。
正気度喪失…0/1d3
呼吸をやめた女を、戸川がそっと抱き起す。
彼はあなたがたを見る。
死人のような眼で、あなた方を見る。
「…願いを、かなえるのが、最善、だと思ったけど…キツイな。…生きてられそうに、ない」
ふっと笑った彼は、そのまま一歩下がる。
そのまま、まっさか様に落ちていく。
ばちゃん、と音が響く。
後は、波の砕ける音だけが響いた。
(探索者が望むならば、DEX*5で落ちる前に引き寄せることが可能。その場合、不定で口のきけない状況で戸川が生還し、探索者がかくまわない限り彼は自首をする)
SAN報酬………1d6
神話技能の上昇はなし。
この場合、留美は深きものへと変貌を遂げず、人のままに生命を終える。すでに生えた鱗はそのままだが。
探索者が罪に問われるかどうかは、KPの裁量や情報にお任せする。
ただ、戸川が探索者を罪に問おうと動くことはないだろう。死体をそのままにするなら「自分が来たときは死んでいた」とだけ司法に証言する。
探索者と交流を持つことも今後一切ない。報酬に関しては、脅しつける・強奪する以外の手段では払わない。
彼は心のどこかで、彼女が人のまま生きられないことを受け入れている。
それでもあきらめたくないから、最後までともにと叫ぶ。
おきてしまったことを責めても仕方がない。
けれど二度と顔など見たくない。といった心境。
…余談だが、彼が狂気に陥り、留美を取り戻すために狂気的な行動を選ぶといったパターンは存在しない。
彼はよくよく理解しているためだ。彼女が「人の好い、少し頼りない戸川晃一」を愛していたことを。
戸川が留美を殺す(彼女の願いをかなえる)ことはよっぽどのことがない限り発生しない。
PL・探索者がそれを望み、説得などの技能にクリティカルしたならば、心変わりをしてもよいだろう。
しかし、彼は人を殺して正気を保てるタイプではない。愛し、守りたい相手ならばなおさらだ。少なくともシナリオ中でマトモに意思疎通を図ることは不可能になる。その卓の雰囲気・探索者の働きかけで変わる可能性はあるが、基本的に一生服役後精神病院。状況によっては服役なしの精神病院行きとなる。
共有メモ
探索可能箇所
【2F】
レストラン(コンサートホール)
バー
【1F】
玄関ホール
オープンデッキ
喫茶店
サロンルーム
トイレ(男女別)
操舵室
スタッフ控室
サロン室の武器の例
槍のレプリカ…1d5+db 耐久10(刃はつぶされている)
レイピアのレプリカ…1d3+1+db 耐久10(刃はつぶされている)
騎馬用サーベルのレプリカ…1d4+1+db 耐久10(刃はつぶされている)
鉄でできた杖…1d6+db耐久10
摸造刀…1d5+db 耐久10(刃はつぶされている)
ライフル・ショットガンのレプリカ…1d6+db(ライフル技能で殴ることができる・銃弾はこめられない)
拳銃のレプリカ…1d3の弾を出せるようだ。(10発)
メニュー表
・前菜
…旬野菜のゼリー寄せ
・スープ
カリフラワーのポタージュ
・ポワソン
…スズキのムース仕立て
・ソルベ
…ザクロのシャーベット
・アントレ&パン
…牛フィレ肉のステーキ わさびを添えて
・デザート
…レアチーズケーキ&あまおう
背景・報酬
報酬早見表(詳しくは各ENDをご参照ください)
SAN報酬………1d6
神話技能……留美の変貌を目撃した場合は+1
深きもの(留美)を拘束した場合はSAN報酬+1
使用AF………狂戦士薬(キパコン106P)*オリジナル要素あり
詳細は著作権の観念から伏せるが、キパコンのデータ通りにCONと耐久が二倍になる。
薬の効果が消えればこの効果は消滅する(オーバーキル)が、このシナリオではそれまでに病院で適切な処理を行っていれば犠牲者は助かることを想定している。後味を悪くしたければ死亡させてもよいだろう。
オリジナル要素として今回の狂戦士薬を摂取した人間は戦闘開始5ターン後に気絶する。
この船の制服を着た人間は襲うなという暗示もかけられている。探索者が制服に着替えていた場合は「勘がいい…!」と称賛してほしい。
背景
アメリカ某所出身の女が、日本で家庭を持った。
自信が深きもの混血児であるとは知らぬままに娘を設けた。
母親の変貌は、娘が9歳の頃から始まり、10歳にて失踪した。
父親は嘆き、彼の親族は噂した。
最初から居所のしれぬ、得体のしれない女だった。
つり合いも取れていない、あんな凡庸な女、出て行って済々した、と。
娘はそんな環境に嫌気がさし、高校卒業とともに渡米。
母の面影を追っていたという意味も、ある。
同時に、整形をし、母に似ていると言われた顔を捨てる。
彼女にとって美しさは力であり、自分を捨てた母の顔を捨てたいのもまた、本心だったために。
アメリカでフルート奏者として過ごすうち、とある男性二人に言い寄られる。
彼らは彼女の言葉も聞かず、まるでゲームよろしく彼女を取り合い。
ゲームよろしく、幼稚に撃ち合った。
あとは、シナリオで彼女が語った通り。
アメリカがどうにもつらくなった彼女は、日本に戻り、戸川と出会う。
ほどなくして引かれあい、幸せに暮らし、生涯を共にすることを意識し始めた頃。
彼女にも深きものの特徴が表れた。
それと同時に、彼女のもとに一人の深きものが訪れる。
名乗りはしない。
もう名前など「それ」にない。
面影はない。
それは留美の感傷でしかない。
けれど「それ」は彼女に己たちの生態を語り、いくつかの知恵を授けた。
「お別れをしなさい」
「あなたは、どうか」
「正しく、愛した人と別れなさい」
そんな声を聴いたのは、きっと留美の幻だ。
けれど、彼女は知識を得た。人を狂気に走らせる薬を得た。
だから、彼女は己につきまとっていたチーフを使い、とある劇を思いつく。
愛しい男に、永遠に自分を刻み付けるための、茶番劇を。