ずっと一緒にいるのだと思っていた。
いつから一緒にいたのかは覚えていない。
ただ、一緒にいるものだと思っていた。
あれは―――彼女は私のものだと思っていた。
…彼女が死ぬ、その時まで。
***
幼い頃から、それなりに、それなりのことができた。
あくまでそれなりであって、極めることはなかった。
さほど要領がいいというわけではないけれど、手先が器用で、それなりに身体能力に秀でていたから。
少なくとも小学校とかそういうのは、それなりにこなせてしまうのだ。
だから、周囲を見下した子供だった。
今思うと、私はそう優れていたわけではないのだけれども……
そこが、それこそが子供の浅知恵というやつだ。
そんなときに現れたのが、彼女だった。
なんだっただろう。覚えていない。
ただ、なにか。なにかを助けたのだ。
それで随分と懐かれた。
気づくと一緒にいるようになった。
最初は鬱陶しかった気がする。
…段々、悪くないと思っていた気もする。
そう、彼女の世話を焼くのは…悪くなかった。
彼女の話を聞くのが好きだった。
―――あの子のことならなんでも知っていると思ってた。
事実、何でも知っていたのだ。
何を嫌っていたのか何を好いていたのか誰を好いていたのか誰を嫌っているのか、全部。
全部―――
けれど。
全部ではなかったから。あの日彼女は死んだのだろう。
私の手の届かないところで、手の届かないところにいったのだ。
すぐ手を伸ばせば、そこにいたのに。
下校途中、もたれかかる彼女を「子供みたい」と交わしたのを覚えてる。
ヘアアレンジの練習がしたいとかいって、私の髪をすく手を覚えている。
からんでしまって、大げさに痛がればしょげたようにする顔も。
お手本だと変わってやって。触れた彼女の髪の感覚も。
くすぐったがって笑う声も、全部覚えているのに――――
もう、手は届かない。
届かないのだと認められた瞬間の気持ちを、どう呼ぼう。
絶望と呼ぶのとも違う、あの感情は。
この身のすべてを焼き尽くすような、あの憤りは。
許さない。
一人でいなくなるなど、許さない。
理由も離さずに、私から離れるなど許さない。
許さない―――許すものか。
そう思っている頃だった、あの本を見つけたのは。
かつて彼女と歩いた道をなぞったある日だった、あの本を見つけたのは。
読んでいると蛆が、蛇が肌をはい回るようなあの感覚は、なによりも、その知識は。
私に残っていた、最後の正気を焼いたのだろう。
ああ、許さない。
私から離れることなど許さない。
せめて、真実を教えてほしい。
そう、こんなことができるなら、教えてほしい。
…違う。
こんなことができるのなら。
歩く死者など、いるというなら。
取り戻さないと。
なにか。
私の知りえぬ、なにかの理不尽で。
勝手に死んだあの子を、取り戻さないと。
取り戻せる手段がこの世にあるなら―――探さなきゃ。
そう気づいたとき、気持ちは明るかった。
こうこうと明るく、一切の闇が視界から消え。晴れがましい気持ちになった。
闇が――後悔が消えることなどないというのに。
私は、それを正しくとらえる目を失ったのだろう。きっと。
ああ、でもそれがいったい何だろう。
この明るい狂気の中を歩いていれば、道の先に彼女がいる。
私はそれだけでいい。
違う、いつか今度こそ、この手が届くのなら。
それこそが生きる意味なのだから。
ああ、今度こそ。
この手が届いたのならば、もう二度と。
もう二度と、離しはしない。
あの子の思考も意思もいらない。だってどこにも逃がさない。
ただあの子の存在と魂と……記憶があるならいい。
そんな、私だけのあの子が欲しい。
あの日の真実を覚えて、語り、二度と離れないあの子。
それを手に入れるためなら、なにをしてもかまわない。
みたいな方向性でにこにこにこにこ微笑んで狂気を隠す探偵でいきますね…
案外親友好きですね。はははは。女の子は人形遊びが好きですからねうふふふ。女の子らしい探索者だなあ!
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